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2005年7月5日(火) 「源義経と成吉思汗」(佐々木勝三、大町北造、横田正二・共著)を読む
 遠野市の上郷町に、『風呂家へ⇒』という道案内の看板がある。昔、銭湯でもあった場所なのかい?上郷町に住んでいるのに、変な看板だなと、長い間、不思議に思っていた。私は歴史と動物が大の苦手なのだ。
 「源義経と成吉思汗」という本を読んで初めてわかった。800年も昔、源義経一行が、気仙から赤羽根峠を越えて上郷町に入り、風呂をたかせて入浴したという、伝説の家だった。風呂とは義経が与えた姓であり、風呂家とは現在も、風呂信さんが営む民宿の名前だったのだ。
 義経は風呂家で3日ほど滞在した。その後、風呂家を出てすぐに義経は愛馬を失う。馬は上郷町来内(らいない)の産だったという。その来内には「お蒼前様」と呼ばれている義経乗馬の墓(今は駒形神社)もある。さらに、板沢(私の住んでいる地名)には義経の真筆を持っていた人(小笠原という旧家)もいたという。綾織町には、弁慶が持ち上げて積み上げたという巨大な石、続石がある。
 私が生まれ育った山田町の大沢にも義経伝説があった。小さい頃から「はんがん」という屋号の家があることは知っていた。「はんがん」とは判官であり、義経が宿泊した屋敷だった。そこの住人、箱石さん(現在も箱石さんが住んでいる)は、それ以来、判官様と呼ばれたのだという。箱石という苗字は大沢に多い苗字であり、私の友人、先輩にも3人ほどいる。義経に関係ある由緒ある苗字だったのだ。
 「源義経と成吉思汗」は、「成吉思汗の秘密」(高木彬光・著)の感想(MyDiary)を読んだ、教え子の○藤くんが紹介してくれた本である。「作者の佐々木勝三という人は宮古の出身で、宮古高校の先生だった人ですよ。知らなかったのですか」とメールで教えてくれた。東京出張の時に○藤くんと会い、その時、あげますよと彼がこの本を持って来てくれたのだ。
 源義経が成吉思汗だったという奇想天外な理論は、高木彬光の小説を読んでも、この「源義経と成吉思汗」を読んでも、確かにかなりの説得力を持つ。どちらの本にもある奇妙な言葉や地名の符合は小谷部全一郎という人が書いた「成吉思汗は源義経也」という本を元にしているようだ。釜石在住の歴史の専門家に言わせると、面白いが真面目に考えない方が良いですよ、ということだった。
 県立高校長や県立博物館の館長を務めた金野静一氏が執筆した「義経北行」という本が、県内では今ベストセラーとなっている。北行だけだから成吉思汗までは言及していないのだろう。いずれ、義経北行伝説が、今また熱い。 
  
2002年6月2日(日) 「蒼迷宮」(結城信孝・編)
 女性作家ミステリーの傑作編であるという。10編の短編が収録されているが、知っている作家は宮部みゆきだけだ。おもしろかったは「死体を運んだ男」(小池真理子)だ。これぞ短編ミステリーのエンディングといったラストが用意されている。松本清張の短編にあるやりきれなさが、この作品ではブラック・ジョークっぽく伝わってくる。
 「祝・殺人」(宮部みゆき)は10編の中で最も推理小説然とした作品。エレクトーン奏者が若手刑事に話すバラバラ殺人事件の推理。警察でも解決に手間取っている事件をいとも簡単に推理する。その過程を楽しむショート・ミステリーである。ラストの意外な犯人やオチなど無視、無視。
 「緑の手」(桐生典子)はミステリーではないが、不思議な読後感をかもし出す。植物に愛情を通わせる神秘的な力を持つ女性。彼女からパワーを得るかのように彼女を取り巻く男女がそれぞれ仕事でも愛情面でも成功を収め、植物のように次々にはびこっていく。生き物の生理・生態に執着を示す作家のようだ。
 作家の執着を表すという点では「泥眼」(乃南アサ)もそうだ。こちらは、日本の伝統芸能、能と日本舞踊の世界への薀蓄がほとばしる。女の生霊、怨霊の化身を表現する能面である「泥眼」をめぐる、日本舞踊家と能面作家の行き詰る対決は興味深い。
 「大空学園に集まれ」(青井夏海)はまあまあ、「濃紺の悪魔」(若竹七海)はすでに内容を思い出せない。「箱の中の猫」(管浩江)はSFだが、いくらなんでもそれはないでしょう。
 「車椅子」(清水芽美子)は明るい障害者が主人公であり、作者の障害者への姿勢が伝わってくる。「オフィーリア、翔んだ」(篠田真由美)はどこかで読んだことがある。この変わった題名も記憶に残っているのだが、いつごろ読んだのか全く思い出せなかった。
 
2004年1月15日(木) 「殺ったのは誰だ?!」(日本推理作家協会・編)
 短編集である。短編はあまり好きではないが、題名につられて買った。が、実際は題名とはあまり関係ない作品が多かった。フー・ダニ、じゃなかったということ。
 最後に入っている「裁かれる女」(連城三紀彦)が一番面白かった。弁護士と弁護の依頼に来た客との会話だけで物語りは進む。中盤から2人の関係が徐々に見えてくる。そして2人の力関係が逆転する後半がこの短編のポイントとなる。しかし先が読める結末は少し興ざめ。
 「子を思う闇」(貫井徳郎)は怖い。父親殺しの少年の心情変化はかなり強引だな。不倫の相手はだいたい予想がついたが、ラストのあの一言が怖い。最後の1行でドスン。短編はこうでなくちゃ。 
 「カウント・プラン」(黒川博行)。ラストで犯人が判明するが、えっ、あいつじゃなかったのか。なぜ?あ〜、あれは伏線だったのか。だまされるぞ。文庫本の題名、「殺ったのは誰だ?!」に合う内容の短編はこれ1つ。神経症の病気の1つにに算症というのをあるのを初めて知る。 
 「右手に秋風」(渡辺容子)では、万引き対策の保安士がわなにはめられる。「バン掛け」や「白ねずみ」、「カラ踏み」など、一般人には分からない万引き界?の業界用語がポンポン出る。
 そのほかの作品。銀の塩(藤原伊織)、ダチ(志水辰夫)、選ばれた人(藤田宜永)、サーカスの怪人(二階堂黎人)、死ぬときは意地悪(西澤保彦)、刑事部屋の容疑者たち(今野敏)。


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