1 「ミリオンダラー・ベイビー」 監督:クリント・イーストウッド 原作:F・X・トゥール キャスト:クリント・イーストウッド ヒラリー・スワンク モーガン・フリーマン |
アカデミー賞のうち、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞4部門を受賞した映画である。同じクリント・イーストウッドが監督した作品でも、「ミスティック・リバー」(主役のショーン・ペンがアカデミー賞主演男優賞)は、テーマが、重い、暗い映画で、あまり面白いと思わなかった。救いようがない映画だった。 同じように重い、暗い映画であるが、この「ミリオンダラー・ベイビー」には、直球勝負で、ガツーンと打ちのめされた感じである。ラスト30分間は人間の尊厳と対峙させられる映画である。アカデミー賞主要部門で、レオナルド・デカプリオ主演の「アヴィエーター」に完勝したが、その理由も十分理解できる。 映画を観る前に本屋さんで原作を立ち読みした。F・X・トゥールの原作は「ROPE BURNS」という短編集に収められた中盤の一編である。映画を観る前に原作を読むのか。ネタバレ感想などに厳しい映画ファンには軽蔑されそうだが、私は多くの場合、ストーリーや結末を知った上でも映画を十分に楽しめる。邪道と思われそうだが、その方がより楽しめる映画もあると常々思っている。だから「ミリオンダラー・ベイビー」も躊躇なくラストまで立ち読み(斜め読み)してしまった。 この映画は、「ロッキー」などのように、単純な、いわゆるスポコン映画でも、アメリカンドリームを追うサクセス映画でもない。もちろんその部分もあり、そこまでも(中盤より少し後)、もちろん大変面白い映画である。 貧困な家庭に育ったマギーが、ボクシングジムで厳しいトレーニングを経て、実戦デビュー。激しいボクシングシーンが続き、マギーの連戦連勝である。痛い場面もあるが、マギーは相手をノックアウトし続ける。そしていよいよドイツ人チャンピオン、青い熊ビリーと対決する。 「ロッキー」のようにこれで終わりでもいい映画じゃないかと思う。結末を知っているから次の場面を見るのがつらい。しかし次の展開があるからこそ、この映画は世界中で評価されたのだ。思いがけない展開、暗過ぎる展開に観客は言葉を失う。 この映画は重いテーマをいくつも観客に投げかける。家族とは何だろう。娘に何十通も出す手紙。それが読まれずにことごとくフランキーの元に送り返される。マギーの家族は最悪である。ファイトマネーで家を買ってやったのに母親らのあの言葉。そして病院に集まりサインをさせようとするあの家族。貧困や愛情欠如だけで説明がつかない。 生き続けるとは何、死ぬとは?2人に芽生えた(らしい)男女の愛情。マギーの最後の微笑みに心が救われた思いがする。そして、「モ・クシュレ」といゲール語の意味が分かった時の込み上げる感情は抑えることはできない。 日本人監督、崔洋一氏も、ラジオでべたぼめだった。若い人たちよりも中高年、シニアの人たちに見てもらいたい、と言っていた。最後に、主演女優(ヒラリー・スワンク)にも触れて、「ヒラリー・クリントンの演技は最高だ!」と言っていた。崔洋一ともあろう有名監督がおおぼけをかました。一人で笑った。ヒラリー・クリントン、って言うじゃない?あんたを、斬りー! |
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2 「SHINOBI」 監督:下山天 原作:山田風太郎(甲賀忍法帳) 主題歌:浜崎あゆみ(HEAVEN) 出演:仲間由紀恵 オダギリジョー 黒谷友香 沢尻エリカ 椎名桔平 虎牙光揮 石橋蓮司 北村和夫 |
昔はよく忍者映画を見たものだ。「忍びの者」、「柳生忍法帳」、「隠密剣士」、「伊賀の影丸」、「服部半蔵」など。夢中になって見て、よく真似もした。手裏剣、シュッ、シュッ!など。忍者の真似が高じて空中転回など覚えたと言ってもいいかも知れない。 最新のSFXやワイヤーアクションは忍者映画で特にその効果を発揮する。何だってできる。よく映画の宣伝文句に使われる「映像化、不可能!」、なんてことは絶対にない。忍者が空中に飛び上がったり、高い木からジャンプしたり、木から木へと移動することなど、映像的にはまったく簡単にできてしまうのだ。日本のSFX技術もかなり高くなったと実感できる。満月をバックにシルエットで3人が飛び上がりスローモーションで戦うシーンはうっとりするほどだ。 衣装も実にきれいだった。実際の忍者があんなにきれいな衣装を身にまとって戦うはずがない。あんなんじゃ目だってしようがない。ドリフターズの忍者は白一色だったが、あれはお笑いのステージ。実写の映画でこんなにもカラフルで美しい衣装でいいのか?後で知ったことだが、衣装のスタッフは、あの「キル・ビル」(監督:クエンティン・タランティーノ)のスタッフと同じ女性らしい。顔も(男も女も)きれいである。どんなに激しく戦っても顔に泥が付いたりすることはないのだ。背景も美しい。伊賀の鍔隠れ谷も甲賀の卍谷も。四季折々の山や川、海岸も出てくる。急に砂漠での決闘になったりする不自然さはあるが、美しいから、割り切って楽しもう。 中身は伊賀と甲賀の戦いだ。5人ずつの刺客が入り乱れて雌雄を決する。その伊賀と甲賀のそれぞれの頭(かしら)が仲間由紀恵とオダギリジョーで、愛し合う仲だ。忍者の世界のロメオとジュリエットだった。愛のために戦いを避けようとする2人がいじらしいが、この映画から戦いのシーンがなかったら価値は半減する。中国映画、「英雄HERO」、「LOVERS」(どちらもチャン・イーモウ監督)によく似ている。オマージュなのか、パクリなのか。どうせなら、画面のカラーまで変えるなどの変化を持たせてもよかった、かな。 それにしても仲間由紀恵は、台詞の言い方がまだ、あの「ごくせん」と同じだった。時代劇は初体験だからとは思うが、まあこれも、映画が面白かったから、許せる。江尻エリカは非常にかわいい役柄だった。ぜひ実際に映画を見て、そのかわいらしさ直に感じてみたら、いかがかな。 |
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3 「アイランド」 監督:マイケル・ベイ(アルマゲドン、パールハーバー) 出演:ユアン・マクレガー スカーレット・ヨハンソン ショーン・ビーン ジャイモン・フンスー スティーブ・ブシェミ |
汚染を完全にシャットアウトし、純粋培養で”生かされて”いるクローン人間たち。白いユニフォームを着て、手首にはリストバンド。無機質的な地下コミュニティーで、各種のヘルス&メンタルチェックを受けながら、完全管理されながらも、日々平穏に暮らしている。もちろん自分達がクローンだと知る由もなく、楽園、「アイランド」に行く抽選会に一喜一憂する毎日だ。 しかしアイランドに行くことはオリジナル人間に臓器提するための儀式だった。つまりクローンにとってアイランド行きは死を意味する。このことを知ったリンカーン(ユアン・M)とジョーダン(スカーレット・J)が白いコミュニティから決死の脱走を計る。 なかなか序盤から面白い設定である。マイケル・ベイにしては抑えた演出が心憎く、クローン映画を真面目に創っているのだと思ってしまう。まあ、映画が始まって30〜40分ぐらいまでは、そう思う。ところが、おっとどっこい。そこから、まあすごい、すごい。これぞ、アルマゲドン、パール・ハーバーのマイケル・ベイの真骨頂。万歳!文句あっか。アクションシーンはハンパじゃなかった。 「宇宙戦争」も主人公たちが逃げ回る(だけの)映画だったが、この映画の2人も、追っ手から、探知機から、逃げて逃げて逃げまくる。このシーンがすごいのだ。まさに息つく間もなく、怒涛のハイテンション。ブッチギリの超怒級、度肝を抜く、信じられないシーンが続く。リニアモーターの高速列車、空飛ぶバイク、巨大トレーラー、ヘリコプター、キャデラック、そしてビルの看板、赤のR(スカGを思い出した)からの墜落など、これでもかのCG画像が観客を襲いまくるのだ。アクション映画好きの人(もちろん私もそうだ)にはたまらない興奮であろう。要体力映画だ。 エンディング近く、クローンコミュニティーから開放された白色着のクローン人間たち。この俯瞰は映像的に気に入った場面だ。何かを訴えようとするシーンである。中盤から終盤にかけて考える間も与えないが、やっとこの場面で観客は考える。人間として未熟な純粋培養の彼らが、悪のはびこる人間社会の中でどうやって生きていくのか。開放されることでハッピーエンドとはどうしても考えられなかったが、映画はハッピーエンド的にエンドロールが流れ出す。 スカーレット・ヨハンソンという女優はなかなか魅力的である。肉厚半開き唇も。「スター・ウォーズ」ではなく「アイランド」を観て正解だった。 |
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4 「四日間の奇蹟」 監督・脚本:佐々部清 原作:朝倉卓弥 主題歌:平原綾香(Eternally) 出演:吉岡秀隆 石田ゆり子 尾高杏奈 中越典子 松坂慶子 西田敏行 |
サヴァン症候群とは、脳に障害を持つ自閉症の子どものうち、10人に1人ぐらいの割合で現れる障害名である。サヴァン症候群と診断された子ども達は特定の分野に驚くべき才能を発揮する。町の住人全員の電話番号を暗記していたのは気仙の○△君。釜石の△□君はペン画で特異な才能を発揮した。下書きもないまま、鉛筆を一筆書きのように動かし続け(書き直すことは全くない)、画用紙一杯に不思議な絵を描いた。三鉄や県内沿岸のJR線の時刻表をほぼ暗記しているのは久慈の□○君だ。 「四日間の奇蹟」の千織はそんなサヴァン症候群の中でも、音楽に飛びぬけた才能を発揮する少女である。一度聞いた曲を完全に記憶し、ピアノで完璧に弾きこなすのである。両親は数年前、海外での巻き込まれ事故で亡くなった。 新進ピアニストとして将来を嘱望されていた如月啓輔は、その時、千織をかばうために左手の薬指の神経を失った。ピアニストにとっては致命的な事故だった。今では、引き取った千織と共に施設の慰問コンサート活動に生きる糧を見出している。 真理子は高校時代から啓輔を想い続けた。それでも納得のうえ、田舎の老舗旅館の長男の嫁に嫁いだ。幸せな結婚生活を送っていたが、跡継ぎを授かることができず、自ら嫁ぎ先から身を引いた。傷心の彼女は施設のドクター倉野に救われ、今はそこの職員として働く。 そんな心に傷を負った3人が山口県角島の療養センターで出会う。紺碧の海、小高い丘の礼拝堂、夜の灯台、満天の夜空等、映画的に美しいシーンが雰囲気を盛り上げる。抑えた演出が心憎い。やがて恐ろしい事故と、その後に起きる奇蹟とは? 原作の感想はミステリーのページに掲載しているが、映画はほぼ原作どおりだった。登場人物のイメージも大きく異ならない。各俳優の演技も文句ないが、特に千織役の尾高杏奈は秀逸である。「ハイド・アンド・シーク」や「宇宙戦争」のダコタ・ファニングにも負けないぐらいだ。自閉症児の演技もピアノも腕前も一級品である。「子犬のワルツ」を弾き始めた時は涙が出た。 「月光」、「亜麻色の髪の乙女」、「別れの曲」など、誰もが知っているピアノ曲が情感を高める。四日間に起こる奇蹟が、不思議でも何でもない、普通のことのように思われる。「いま、会いに行きます」と比較されることもあると思うが、2人のできちゃった婚で、あの映画は今はもう興ざめ。「いま、会いに行きます」にイマイチ感情移入できなかった人でも、「四日間の奇蹟」には満足するだろう。おススメの映画です。 |
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5 「宇宙戦争」 監督:スティーブン・スピルバーグ 原作:H・G・ウェルズ 出演:トム・クルーズ ダゴダ・ファニング ティム・ロビンス ジャスティン・チャットウィン |
スティーブン・スピルバーグ作品を見るのは昨年の年末、やはり八戸フォーラムで観た「ターミナル」(トム・ハンクス主演)以来だ。私はジョージ・ルーカス(スター・ウォーズなど)より、スピルバーグの方が断然好きだ。素直に、マイ・フェイバリット・ムービー・ディレクターと言える。 原作は約100年前に書かれたThe War Of The World(by H・G・Wells)。高校の英語の教科書で紹介されたこともある。オーソン・ウェルズによるラジオドラマを真に受けてパニックを引き起こしたという、あの有名な作品である。「インデペンデンス・デイ」や「マーズ・アタック」などと同じく異星人による地球侵略モノである。 「インデペンデンス・デイ」ではヤツラは巨大円盤で地球にやって来た。「宇宙戦争」ではヤツラは地中からやってくる。出てくる時の映像、音響はすさまじい。高速道路の破壊シーンは阪神・淡路大震災を思い出させる映像である。地球を滅亡させようとするトライポッドはなんとも古典的、タコ型火星人スタイル(笑)である。これがまた強い。 トム・クルーズは、長男(ジャスティン)と長女(ダコダ)を連れて逃げる、逃げる、ただただ、逃げ回る。自分達の安全のためには人が死のうとかまわない。名子役ダゴダ・ファニングの恐怖の演技がこの作品でも冴える。キャーキャー叫び続けるあの声。 地下室での十数分の恐怖は「ジュラシック・パーク」、フェリーのシーンは「タイタニック」、トライポッドが街を破壊するシーンは「GODZILLA」(ローランド・エメリッヒ監督)、また同じスピルバーグ監督の「AI」に良く似たシーンも見ることができる。 この手の映画によくあるご都合主義は仕方がない。ラストに不満を持つ人もいるだろう。しかし、最初から最後までハラハラ、ドキドキの恐怖感はさすが、「激突」や「ジョーズ」で有名になった監督である。怖がらせ方はハンパじゃない。観終わった後、頭が空っぽになる。いやあ、面白かった。 頭が空っぽになりすぎて、駐車券を失くしてしまった。10分以上、車内や財布、ポケットなどを何度も捜したが出てこない。しようがない。紛失しました、と係員に言うしかない。1日分の料金を請求されるのか、名前や勤務場所、職名なども聞かれたりするのだろうか。「すみません、駐車券を失くしたのですが」、おずおずと係員に言う。さて、この顛末は? |
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6 「バットマン・ビギンズ」 監督:クリストファー・ノーラン 出演:クリスチャン・ベイル マイケル・ケイン リーアム・ニーソン モーガン・フリーマン ゲイリー・オールドマン ケイティ・ホームズ 渡辺謙 |
ティム・バートン監督の「バットマン」と「バットマン・リターンズ」も見たが、私は全く面白いと思わなかった。バットマンはマイケル・キートンが演じていた。ペンギン怪人やキャットウーマンも出てきて、これこそアメリカンコミックといった映画だった。ゴッサム・シティの闇の中で戦うバットマン。当然ながら夜のシーンが多く、画面が暗かった。アーノルド・シュワルツァネッガーが悪役を演じる「バットマン&ロビン」はもう見たいと思わず、見に行かなかった。 監督も俳優も変わったバットマン最新作は、題名が「バットマン・ビギンズ」となる。評判が良いので先日ワーナーマイカル北上に観に行った。今までのシリーズと違って、今回は、ブルース・ウェイン(バットマン)がコウモリと相対する子ども時代から始まる。 (自分のせいで?)両親を失くし、悩み、苦しむブルース。幼なじみの恋人との人間ドラマも描かれる。やがて、チベット(?)の高山に篭り、修行者の身となる。トム・クルーズ似のクリスチャン・ベイルが、苦労しながら、徐々にバットマンとして成長し、悪と対峙していくストーリーは他のヒーロー物とは違うコンセプトだ。 テレビココマーシャルや予告編では渡辺謙が大きく取り上げられ、今回は渡辺謙が悪役を演じるものと思っていた。しかし渡辺謙は悪役ではなかった。修行僧の親分で、ブルースに悪と戦う知恵と武術、精神をたっぷりと仕込む役である。存在感を示していた。今回は、彼をはじめ、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマンなど脇を固める俳優が渋い。 アクション映画としての見せ場もたっぷりあった。バットマン・モービルでのカーチェイス、電車アクションなど。しかし、JR西日本のあの事故を思わせるシーンがある。電車が折れ曲がって駐車場(のような場所)に突っ込むシーンである。公開時期をもう少しずらす配慮などなかったのかなと思う。関係者にはつらいシーンであろう。 |
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7 「スター・ウォーズ EP3」 監督:ジョージ・ルーカス 出演:ユアン・マクレガー ナタリー・ポートマン ヘイデン・クリステンセン サミュエル・L・ジャクソン |
もう続編はないという完結篇である。1、2が期待ほどでなかった人にも満足のいくできばえであろう。かなりドラマチックである。背信と対決。CGがすごい! |
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8 「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」 監督:ブラッド・シルバーリング 原作:レモニー・スニケット 出演:ジム・キャリー メリル・ストリープ ジュード・ロウ エミリー・ブラウニング リアム・エイケン |
「ハリー・ポッター」シリーズ、「ロード・オブ・ザ・リング〜指輪物語〜」、「ナルニア国ものがたり」など、ファンタジー路線の映画がヒットする昨今である。「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」も、レモニー・スニケットのベストセラー(だそうだ)、「世にも不幸なできごと」を映画化した作品であるという。 長女のヴァイオレットは天才発明家、長男クラウスは本の虫で暗記が得意、末っ子サニーは噛み付き何でも噛み砕く。この3姉弟妹、冒頭から火事で両親を亡くしてしまう。かくして、親戚のオラフ伯爵に預けられることになるが、やがて子どもたちに残される遺産を巡る大人たちと、彼ら3人の戦いが始まる。世にも不幸な子どもたち3人が力を合わせて、何度も訪れる危機を脱する。危機一髪時の機転や脱出のアイデアが面白い。 ジム・キャリーがオラフ伯爵を演じているが、良くも悪くも、ジム・キャリーらしい怪演である。ファンには、これぞジム・キャリー、たまらないだろう。アカデミー賞ノミネート女優のメリル・ストリープも子供たちを預かるジェセフィーンおばさんを演じる。大女優メリルが脇役とは贅沢な配役ではなかろうか。 世にも不幸な子どもたちであるが、暗さはまったくない。かわいそうで、見ていて涙が出る映画?いやいや、そんなことは全くない。ハラハラドキドキさせるが、子どもたちはどんな危機にも冷静に対応する。やがて「世にも不幸せな物語」はハッピーエンドを迎える。ファミリー向けの楽しい映画である。観て損したとは思わせない映画だ。9月16日、DVD&ビデオがリリース予定。 |
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9 「天国と地獄」 監督:黒澤明 原作:エド・マクベイン(キングの身代金) 出演:三船敏郎 仲代達矢 香川京子 三橋達也 木村功 志村喬 山崎努 |
文化庁と東京国立近代美術館フィルムシアター主催の平成17年度優秀映画推進事業が久慈市にやって来た。この事業は全国の文化会館などで往年の名画を広く国民に鑑賞してもらう事業であり、映画ファンにはうれしい企画である。 各都道府県でそれぞれ数ケ所で実施のようだが、岩手県ではなぜか久慈市だけだ。主催に久慈市教育委員会が加わる。久慈市で上映されるのは、黒澤明の作品、「酔いどれ天使」、「羅生門」、「生きる」、「天国の地獄」の4作品である。1日に2本ずつ2日間に亘って上映された。1本だけでも、4本すべてを観ても、一律500円という、うれしい料金設定だった。 どの映画も観たいが、日程的に合う「天国と地獄」を観ることにした。原作は「87分署シリーズ」でもおなじみのエド・マクベインである。そのマクベインが7月6日に亡くなった(78歳)。彼が亡くなって数日後に、「キングの身代金」をベースにした映画、「天国と地獄」を観るのも何かの因縁。 午後から半日の年次休暇を取り、久慈市民会館アンバーホールへ行く。アンバーホールの小ホールに観客は50人ほどか。年配者が多い。スクリーンはシネマスコープ用で思ったより大画面だった。 スピーカーが悪いのかフィルムが悪いのか、普通に話している声は聞き取れるが、大声やテンションの高い声がよく聞き取れない。モノクロ画面は思ったよりきれいだった。当然であるが、役者がみんな若い。犯人役の山崎努が熱演であるが、最初は誰だか分からなかった。今の山崎努と別人のようなイメージである。 40年以上前の映画であるが、これぞ名作中の名作。今でも十分に楽しめる映画だ。窓の開かない特急「こだま」からどうやって身代金を投げ下ろすのか。手持ちカメラで撮影したと思われる列車内の映像はサスペンスフルだった。この映画を真似た誘拐事件が実際に起こったというが、その気にさせるトリックである。 そして後半の横浜市伊勢崎町のナイトクラブの猥雑さ。昔のナイトクラブではきつねそばやタマゴ丼も売っていたのか(笑)。そしてラストのパートカラーによる煙突からピンクの煙。そう言えばパートカラーに胸躍らせた映画があったなあ。パートカラーで胸躍らせる映画って?(^^ゞ 素晴らしい企画を久慈市に持って来てくれた関係者に感謝である。来年も是非お願いしたい。他県などのプログラムの作品リストを見た。観たい作品:「飢餓海峡」、「日本昆虫記」、「五番町夕霧楼」、「紀ノ川」、「八月の濡れた砂」、「けんかえれじい」等、等。昔の映画も良かったねえ。 |
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10 「亡国のイージス」 監督:阪本順治 原作:福井晴敏 出演:真田広之 中井貴一 寺尾聰 佐藤浩市 勝地涼 岸部一徳 原田芳雄 |
日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞したことのある俳優4人(真田、中井、寺尾、佐藤)が出演し、話題性は超一流。原作本もベストセラー。コミック版もある。さらに、防衛庁、海上自衛隊、航空自衛隊の全面的な協力を得た話題作。福井晴敏の作品は、立て続けに公開された、「終戦のローレライ」、「戦国自衛隊1594」に続き、この「亡国のイージス」で3作目である。面白くないはずがない。張り切って観に行った。しかし、がっかりした。 まず、原作を読んでいないためなのか、登場人物たちの行動が理解できない。まだ若い如月(勝地)があんな任務を背負いどうやって自衛隊員としてイージス艦に搭乗できたのか。彼と女性工作員とのキスシーンも唐突だ。そもそも彼女は一体どういう人間なのだ。いそかぜ副艦長の宮津(寺尾)が反乱を起こし、幹部たちも彼に従う理由も分からない。また宮津と某国テロリストたちの関係もよく分からない。原作を読んでいる人には分かっていることらしいが、2時間の映画の中では説明不足だったようだ。 それでも、イージス艦内でのダイハード的アクション映画だろうと期待していた。「10時間以内に要求が満たされなければ、東京湾に特殊弾頭のミサイルを撃ち込む」。テロリストと内閣総理大臣との要求交渉もこの手の映画にはよくあるシーンである。普通は見せしめに実際に東京湾にミサイルを撃ち込み、テロリストたちの本気を観客に示し、サスペンス度を高めるものだが、残念ながら、それがなかった。アクションが艦内だけのアクションで迫力がない。 千石(真田)が、「この艦を守る、それが俺の任務だ」と、カッコいいことを言うが、最後はチャチなCG合成により、艦は爆破され沈没する。こんなラストでいいの? 非常なテロリストたちとの壮絶な戦いを見たかったが、「撃たれる前に撃つ」に対して、「撃つ前に考えろ」とか、「考える前に考えろ」とか、わけが分からない。こんな映画に人情論が必要か。 戦艦での反乱はスティーブン・セガールの「沈黙の戦艦」、強力な毒ガス兵器グソーを巡る攻防は、ニコラス・ケイジとショーン・コネリーの「ザ・ロック」に似ている。しかしそのどちらも「亡国のイージス」よりは断然面白かった。どうしようもない似非アクション映画にばかり出ているセガールの映画よりひどいなんて。 自衛隊の宣伝にはなったろう。いそかぜの巡航シーンや2機のF2戦闘機など、やはりカッコ良かったから。 それにしても、最新ハイテク要塞と化したイージス艦で最終的にモールス信号と手旗信号か。皮肉である。笑えるな、これ。笑ってもイージス艦? |
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