私の薦めるミステリーベスト10

お薦めコメント(ネタバレ注意)

「容疑者Xの献身」(東野圭吾・著)

「このミステリーがすごい2005年」第1位、「本格ミステリー・ベスト10」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、そして、第134回直木賞受賞作ときたら、読まないではいられない。お薦めナンバーワンはこの本だ。

冒頭から引き込まれる。母親と娘による、止むに止まれない殺人は切ない。しかし涙はラストに取っておこう。判明するトリックに誰もが驚き、数学教師である石神の女性への愛に眼を見張るだろう。これこそまさに純愛。ラストの数ページは本当に泣けます。
 K谷Y子先生にお薦めしたところ、早速読んで感動したそうです。

「扉は閉ざされたまま」(石持浅海・著)

密室の扉は閉ざされたまま、伏見と探偵役の優佳の対峙が深夜まで続く。この緊張感あふれる展開は見事だ。作者・石持浅海氏の知的ゲームに翻弄され、犯人と共に心地よく、なぜか完全犯罪の破綻に心が躍る。

「刑事コロンボ」でお馴染みの、いわゆる倒叙モノである。倒叙ミステリーでは、犯人も犯行のトリックも(この作品では密室殺人)も最初に読者に明かされる。後は、犯人対探偵役の知的駆け引きだ。

最初から最後まで、ワクワクして読み続けることのできる、傑作ミステリーです。

「霧越邸殺人事件」(綾辻行人・著)

名探偵、大邸宅、外は吹雪、怪しげな住人たち、血みどろの惨劇、北原白秋の「雨」の見立て殺人、破天荒なトリック、座敷牢の狂人、大どんでん返しなど、こんな古典的推理小説に酔いしれる幸福感を味わってみたらいかがでしょうか。

「あの夜アリバイを主張した人間の中にこそ、犯人がいる!」など、カッコよく終章に向かう。が、どっこい、そう簡単には終わらない。いったん犯人とトリック解明か、と思わせた後で、謎の人物が登場し、真犯人を暴いていく。う〜ん、たまんない。推理小説の醍醐味だー!

綾辻行人の作品は最新作を除きすべて読みましたが、最高傑作はこれ、でしょう。

「四日間の奇蹟」(浅倉卓弥・著)

「第1回このミステリーがすごい大賞」受賞作。作者はこの受賞で賞金1200万円を獲得した。まさにその名の通り「すごい!」。文学的香り・色彩を帯びた第1級のエンタメ作品であろう。ラストは胸が熱くなり、思わず感涙。

ピアノが弾けなくなった音楽家と身寄りを亡くした知的障害(サヴァン症候群)を持つ少女が、たまたま慰問コンサートで訪れた病院で体験する4日間の奇蹟。ベートーベンやドヴォルザークの名曲が本のなかから聞こえてくるようだ。

この本では、サヴァン症候群(自閉症の一種?)についても知ることができますよ。

「星降り山荘の殺人」(倉知淳・著)

今まで様々な予期せぬラストに出合ったし、だまされた作品も多い。が、この「星降り山荘の殺人」ほど、だまされるミステリーはなかった。まさに、えーーーー!と思う。

作者の”フェアな”コメントが憎い。章ごとに、「○○はワトソン役。絶対に犯人ではありえない」とか、「いよいよ探偵役が登場する。当然この探偵役も犯人ではない」、「重要な伏線が張られてあるから注意して読むこと」など。こんな挑戦的なミステリー、今まであったか。ほとんどの人間がだまされるだろう。しかし納得、そしてもう一度読んでみたくなる。絶対にだまされるもんか、と意気込んで読んでみたら面白いと思いますよ。

「博士の愛した数式」(小川洋子・著)

交通事故により80分しか記憶の持たない数学博士と、そこの家政婦、そして彼女の子どもルート(博士が付けたあだ名)の3人の愛の物語である。恋愛でもない、親子愛、仕事愛でもない、愛の物語。最近映画化された作品でもある。
 ほろりとさせられたり、読後感さわやかなすぐれた小説であるが、数学の解説のページも面白いし、読んでいて楽しかった。もちろん数学が苦手な人にとっても、この本の面白さや価値は変わらないと思うので、ご心配なく。素数の秘密、友愛数、完全数など、勉強になりますよ。

「13階段」(高野和明・著)

第47回江戸川乱歩賞受賞作である。赤川次郎や宮部みゆきら5人の選考委員全員一致での受賞作品であったという。さすがによくできている推理小説だ。

 死刑確定囚の冤罪をはらすためデッドラインと戦いながら、不可能と思われる意外な真犯人探しを行う。さまざまな伏線を散りばめ、読者へ挑戦しているかのようなストーリー。ミスリーディングにだまされないように。

しかし、どんなに注意深く読んでいっても、誰でもあっと驚く第5章最後の1文。その衝撃にしばらく本を投げ出し、なぜ、なぜ?が頭の中でグルグル。

「犯人に告ぐ」(雫井脩介・著)

メディアを介して犯行声明や犯人への呼びかけを行う「劇場型犯罪及び捜査」がこのミステリーの主軸を成す。ついに巻島がテレビのニュース番組で犯人に宣戦布告する。「犯人に告ぐ。今夜は震えて眠れ」と。終盤のゾクゾクする面白さである。このあたり、メル・ギブソン主演の映画「身代金」(監督:ロン・ハワード)を思い出す。スリリングでありサスペンスフルであり、胸のすく痛快な展開である。

何度か、おやっ、と思う箇所がある。作者の意図であろう。読者を翻弄させて喜んでいる。憎いね。どういうことかって?読んでみればわかりますよ。

「震度0(ゼロ)」(横山秀夫・著)

阪神・淡路大震災の発生した朝に、そこから700キロ離れたN県警察本部の刑務課長不破が突然失踪する。ここから始まる小説であるが、阪神淡路大震災はストーリーに何ら関わってこない。一人の人間の失踪がN県警上層部に激震をもたらし、それからたった数日間の出来事を、阪神大震災のテレビ画面と死傷者の数の増加を随所に挟み込みながら、スリリングに読ませる。小説としては面白く、飽きない。
 横山秀夫の独壇場とも言える警察小説である。「半落ち」とどこか共通点のある展開である。「半落ち」に泣けた人にはお薦めの一冊です。 

10

「キルケーの毒草」(相原大輔・著)

怪奇幻想もので始まるが、コテコテの本格ものだった。時代は大正時代。ある屋敷内で連続で発生する殺人事件。果たして探偵役は誰なんだ?登場人物が多い。

登場人物の一人に清照(きよてる)という重要人物あり。きよてる君って、他人じゃないみたい。探偵役だったらいいな。殺されたり、犯人だったりしないでくれよ。そう思いながら読み進めるが、残念!素っ裸にされ、頭部を切り取られ、下半身が地面に埋められた死体で発見される(ネタバレ、ごめん)。最悪。

怒涛の解決編とは言うが、解決編も長い、長い。終わったと思ってもまたまたびっくり。 


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