山村 美沙
2002年4月30日(火) 「京都・神戸殺人事件」(山村美紗・著) |
山村美紗は京都を舞台とする軽いノリの推理小説で人気がある。テレビの2時間枠ドラマにもよく出てくる作品を多数書いている。主人公が女性であることが多いが、勿論女性らしいタッチで男女の愛情も絡ませる。読みやすさ、ストーリー展開の速さでは、西村京太郎には及ばないものの、男の西村京太郎に女の山村美紗、と自分では勝手にそう思っている。 クイズ番組で知り合い、京都・神戸旅行に出かける「地名さん」たち。嵯峨秋子、明石夏子、志摩信一、伊勢次郎の4人である。京都の嵯峨野・落柿舎(らくししゃ)で女性が毒殺され、4人のメンバーに嫌疑がかかる。やがてその中の1人も東寺(とうじ)の境内で殺され、東京でもある男性が殺される。最も怪しい人間は中川、さらに嵯峨や明石、伊勢にも殺人の動機は考えられる。 そして、密室殺人にダイイング・メッセージ、アリバイ崩しと推理小説のお膳立てはバッチリである。男女の愛情関係も盛り込まれ面白くないはずはないのだが。。 しかし面白くない。その訳はすぐに分かった。登場する人間が魅力的に描かれていないのだ。感情移入できる人間が1人も出てこない。男女の愛に関しても、わざとらしい、あるいは強引な展開についていけない。最も嫌いなタイプの人間だと思われる中川が犯人なら良かったのにと思ってしまう。ところが彼は犯人ではなかった。残念!それどころか、秋子と結婚を約束するほどの仲になってしまう。あっという間に。こんなラストはありか?やはり彼女の作品はTVの2時間ドラマ向きなのかと思ってしまう。 |