綿矢 りさ
2004年3月7日(日) 「蹴りたい背中」(綿矢りさ)を読む これも芥川賞受賞作 |
今年の下半期芥川賞受賞者は2人とも若い。「蛇にピアス」の金原ひとみは20歳、「蹴りたい背中」の綿矢りさは受賞時19歳(誕生日が2月だからすでに20歳であはあるが)である。両作品を掲載する「文藝春秋」3月号は記録的に売れ増刷も重ねたようだ。もちろん私もすでに購入してある。 早稲田大学1年在学中の綿矢りさの「蹴りたい背中」を読んだ。終始けだるい文体で、高校生の「私」と同じクラスの「にな川」の奇妙な友人関係を表現する。微妙なアンバランス?いや、危ういバランスを保ちながら、背中越しに愛らしきものを感じる、「私」のじれったさがこの作品のテーマであろう。 理科の実験で5人ずつのグループを作ることになった時、必ず出る余り者。その余り者の2人が「私」とにな川である。つまり2人ともクラスではのけ者、変わり者、小学生ならいじめられっ子かも知れない。 「私」は大人びた高校生。覚めた目で旧友たちを見ている。にな川はある女性アイドルモデルに夢中で、女性誌を買い集め、写真集、ポスター、関連グッズなども、ネットオークションからでも買いあさる。つまりにな川は完璧なオタク少年である。 そんな2人がアイドルモデルを媒介に接近する。「私」がそのアイドルと会い話しもした、ただそれだけのこと。にな川はそんな「私」へ接近してくる。 綿矢りさは若いのに文章が上手だ。「川の浅瀬に重い石を落とすと、川底から砂が立ち上がって水を濁すように」などのメタファーが効果的に散りばめられ、新鮮な読後感である。 |