内田 康夫


2008年1月7日(月) 「菊池伝説殺人事件」(内田康夫・著)を読む
 遠野に多い菊池姓。4人に1人が菊池さんとも言われている。なんでこんなに多いのだろう。菊地さんを含めると岩手県内には広く分布する姓であるが、やはり遠野にダントツ多い菊池さん。忠義武烈の菊池一族なんだとか。
 熊本県に菊池市がある。遠野市、先代の菊池正市長の時、菊池市と遠野市は友好都市提携 を結んだ。菊池市には菊池一族ふるさと祭りがあり、遠野市から菊池さんが大勢で行ったり、遠野物語ファンタジーに菊池市民がやはり大勢で観に来てくれたり、菊池市の物産展を遠野市で開いたり。両市の市民交流はそれ以来盛んに行われている。
 先日ブックオフでたまたま見かけた「菊池伝説殺人事件」。遠野市や菊池市に住んでいる人なら、菊池さんでなくても読んでみたくなるミステリーである。なんともそそられる題名ではないか。
 冒頭、「清少納言と西郷隆盛と菊池寛が親戚である」と出てくる。えっと思う。西郷隆盛の祖先発祥の地が菊池市だと言うことだが、清少納言、それに菊池寛はいったいどんな関係があるのか。ミステリーの導入として面白い。
 また、主人公・浅見が乗った新幹線の隣に座った女性が菊池由紀。彼女は菊池一族の娘で菊池市に向かうところだった。たまたま東京で乗り合わせ、博多で乗り換える熊本本線の特急「有明」でもまた隣になるというご都合主義。まるで2時間ドラマ的安易な設定だ。
 やがて菊池市と長野県で菊池さんなどが殺される。序盤から中盤にかけてはまあまあ面白い展開だった。菊池姓についても歴史的に解説してくれるし、菊池さんなら必読のミステリーだろう。しかし、トリックがしょぼい。さらに、。。
 
2005年8月17日(水) 「遠野殺人事件」(内田康夫・著)を読む 
 「侍浜日記」のページからここに移動する際、操作ミスにより削除してしまった。バックアップファイルをあちこち探したが、リカバーできなかった。残念。内田康夫の旅情ミステリーであるが、遠野に関わるのは五百羅漢と立丸峠に死体が発見されるだけ。読む前はかなり期待したが、後で気が付いたが、これは「遠野殺人事件」であり、「遠野物語殺人事件」ではなかったのだ。
 
 
2001年10月28日(日) 「金沢殺人事件」
 内田康夫の「地名+殺人事件」もかなり多く出版されている。過去に読んだのに、「遠野殺人事件」などがあるが、その他に、「天城峠〜」、「津和野〜」、「日光〜」、「津軽〜」、「湯布院〜」等々。今日読んだ、「金沢殺人事件」も、ご多分に漏れず,浅見光彦が探偵役を務めるシリーズものの一冊。冒頭から登場するヒロインと思しき女性(浅見の相手役かと思っていた)、北原千賀が第2章で突然、金沢で起こる第2の殺人事件の被害者となる。このような展開って推理小説の常道をはずれてるんじゃないの?北原は音大でバイオリンを学ぶ素敵な女性である。第1の殺人事件被害者のダイイング・メッセージを聞き、浅見と共に事件解明に大きな役割を果たす女性だと思っていたのに、簡単に殺されてしまうとは、残念である。
 数年前、富山に出張の折、土・日を利用し、能登半島と金沢まで足を伸ばしたことを思い出した。ほぼそのルートに沿ってこの小説は物語が展開する。旅情豊かな作品である。滅びるものの儚さ(はかなさ)として、朱鷺(トキ)とその朱鷺を描き続ける画家(美術教師)や民芸花火と牛首紬(うしくびつむぎ)、そしてそれらの職人を登場させ、しっとり物語を展開させる。
 そして、推理小説の中でひとつのサブ・ジャンルにもなっている、ダイイング・メッセージもの。しかし、このダイイング・メッセージの、いかにもとってつけたような、思わせぶりのメッセージはいただけない。ラストの犯人解明にそれほど効果的に使われているとは思われないし、何よりもメッセージに意外性がなく、きわめて平凡な素直なメッセージだ。誰だって予想できるメッセージだったぞ。
 
2002年8月28日(水) 「小樽殺人事件」(内田康夫・著)
 身近な地名や行ったところのある”地名プラス殺人事件”。本屋さんでこんな背表紙を見ると、とりあえずすぐに買ってしまう。文庫本ならまとめて4、5冊も買う。そしてしばらくは書棚にツンドク状態。数日前、さあ次は何を読もうかなと物色中、目に止まったのがこの「小樽殺人事件」だ。
 小樽には2年前の9月に行った。おなじみの小樽運河や、北一硝子、おたる水族館、石原裕次郎記念館などを見て歩いた。たくさんある寿司屋の一軒にぶらっと入り、美味しい握り寿司も食べた。
 そんな小樽のことを思い出しながらページを繰った。例によって目次の次のページに小樽周辺地図が載ってある。おや、珍しい。家系図もあるぞ。扉には、「旧家を巡る歴史的怨恨」とか「黒揚羽(くろあげは)に託した驚愕のメッセージ」などの宣伝文句が目に飛び込んできた。なんとなく陰鬱なおどろおどろしさが感じられる。一瞬、これは横溝正史の作品かと思ったほどだ。そんなことはない、作者は確かに、内田康夫である。
 「遠野殺人事件」や「金沢殺人事件」、「津和野殺人事件」など、内田康夫の一連の推理小説は旅情ミステリーと呼ばれている。女性にもファンも多い。探偵役はルポライターの浅見光彦。頭脳明晰でシャーロック・ホームズばりの論理的名推理で事件の謎を解く。
 事件の全容が浅見には分かっていても、読者である我々にはちっとも分からない。まず動機が全く分からない。2人が殺されて得する人間はいったい誰なんだ?もちろん犯人も分からない。「犯人は自殺を偽装したように見せかけたようにして殺したように見せかけた」。こんなややこしい表現に頭も混乱する。
 いよいよラスト。以外にも鍵は男女の愛憎だった。動機は復讐。まずまず、納得できる結末である。少し涙も出てきたかな。
 浅見と絡んでくる津田麻衣子の描き方が少々不満である。歯の浮くような表現とでも言おうか、薄っぺらな女性像である。彼女に関しては少しいい加減な筆運びだったと思う。
 内田康夫のミステリーを純文学教養推理小説と呼ぶ人もいるという。わけの分からないジャンルである。教養推理小説なんて初めて聞くフレーズだ。


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