筒井 康隆
2010年1月18日(月) 「ロートレック荘事件」(筒井康隆・著)を読む まいった! |
![]() しかし、そこは天才・奇才の筒井康隆のこと、一筋縄ではいかないラストが待っている。読者は確実にだまされるだろう。そんなバカな、といってもう一度前に戻ってみたりもするだろう。解決編にはご丁寧に伏線の説明がカッコ内に(○ページ△行目)というように記載されている。こんなにバカ親切な解決編も珍しい、というより初めて読んだ。 真相が判明し、やられたと心地よい衝撃を受ける人が多いと思うが、人によっては怒りだし読んでる本を投げつけるかも知れない。フェアじゃないと言う人も多いようだが、作者は実にうまく読者をミスリードしている。実は僕も最初、ムカッときた。読むのをやめようかと思った。 少々ネタバレになるが、第1章のオレと第2章のオレは違う人物であることは読んでいてすぐに分かる。だったらそれ以外の章のオレは誰なんだろうと考えてみよう。おれらとは誰と誰で、2人なのか3人なのか。あざといとも言えるが、人物名がフルネームで記載されるか名字あるいは名前だけか、これもヒントになる。特にロートレック荘2階の平面図の宿泊人名には注意のこと。実際に何人泊まっていたのだ。ネタバレ過ぎ、ここまで書けば、トリックが分かったかな。 いわゆる叙述トリックである。叙述トリックとは、犯人が登場人物をだますトリックではなく、作者が読者をだますトリックのことを言う。作者はアンフェアにならない程度に読者をミスリードする。男だと思って読んでいたら、実はラストに主人公は女だったとか。だから叙述トリックは映像には向かない。映画だったら叙述トリックは一般的に無理だ(我孫子武丸は氏の推理小説「探偵映画」の中で、叙述トリックを用いた映画もあると具体的な作品を挙げて説明しているが)。 推理小説を読む楽しみの一つがだまされる楽しみといえるかも知れない。 |