高橋 克彦
2005年1月12日(水) 「北斎殺人事件」(高橋克彦・著) |
「写楽殺人事件」に次ぐ高橋克彦の浮世絵ミステリー。と言っても私はまだ「写楽〜」を読んでいない。「北斎〜」の主要な登場人物が、「写楽〜」について何度も話題にする。そこまで言わせていいのだろうか。ネタバレになっている箇所もある。犯人は誰かは分からないが、「〜が死んだ、殺された」なども言わせる。「写楽〜」を読んだ人にだけ分かる楽屋落ちもあったようだ。後で「写楽〜」を読もうと思っている人にとっては少し興ざめであろう。 さてこのミステリーには謎が大きく2つある。1つは普通に、〜を殺した犯人は誰かとか密室殺人の謎など、推理小説としての謎である。もう1つは、葛飾北斎が隠密だった?なぜ彼が名前を変え旅をし続けたか、なぜ貧乏生活だったかなど、葛飾北斎自身についての謎である。 前者は、アメリカでの事件、それも葛飾北斎に全く関係なさそうな殺人事件が終盤に思わぬ展開を見せるなど十分に楽しめる内容であるが、後者は純粋に歴史的記述や年表が多く、歴史に疎い私にとって読み続けるのがつらくなる謎である。結局、葛飾北斎の90年にも及ぶ人生は謎だらけ、いかように解釈できることなのだと開き直ってみたりはするのだが、単なる負け惜しみ。自分の浅学さを棚に置いて、推理小説としては余計な薀蓄、などと毒づいてみたりもする。 続けて「写楽〜」を読む気を失ってしまった。 |
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2002年2月22日(金) 「降魔王」(高橋克彦・著) |
高橋克彦は歴史小説、推理小説、ホラー小説の3分野で活躍する盛岡出身の超売れっ子作家である。各賞の審査員も務める。 「降魔王」は題名からすぐ分かるように、ホラー分野の小説である。講談社文庫創刊30周年記念特別書き下ろし作品だという。2001年11月15日発行であるから高橋克彦の最新作か。裏表紙のキャッチ・フレーズには、「高野山で修行を積んだ剣(ハバキ)杏ノ介が命を賭して闘う感動の長編!」とある。「傑作ホラー小説」とも書いてある。 過去に読んだ高橋克彦のホラー作品は、92年に直木賞を受賞した「緋い記憶」。これは盛岡を舞台としたちょっと怖いミステリーだった。久野寧子の演出・脚本による舞台作品も面白かった。怖かった。86年吉川栄治文学新人賞を受賞した「総門谷」も買って読んだが、長すぎて(800ページほどだったと思う)途中で飽きてしまった。最後まで読まないでしまったと記憶している。 そしてこの「降魔王」。舞台は岩手県東和町である。東和町は、邪馬台国の住民たちに追われて逃げて来た、倭国、つまり日本式には和国の人間が作り上げた本拠地だという。つまり、東の和国それが東和町であるという。おもしろい説である。さらには坂上の田村麻呂が当地を支配していた頃、敵対していた蝦夷の棟梁が阿弓流為(アテルイ)であるとか、今、話題の陰陽師(オンミョウジ)まで登場する。遠野高校サッカー部とJリーガで活躍したという漣という人間が悪として登場する。 それで、おもしろいかって聞かれると、う〜ん、おもしろいといえばおもしろいし、つまらないとも思えるし、ばかばかしい話でもある。第一、獏っていったい何なんだ? |