高田 崇史 

2009年10月28日(水) 「QED神器封殺」
 文庫本の帯に書いてあるキャッチコピーがふるってる。「いったい誰が、こんな壮大な仕掛けを日本に施したのか?」 ちょっとオーバーじゃないか。
 そしてラスト80ページは袋綴じになっている。そもそも袋綴じは週刊誌でもミステリーでもそそられるものがある。週刊誌の場合は、中はきっとすごい写真なんだろう(すごい写真って?)。推理小説の場合は、読者への挑戦、驚愕のラスト、思いがけない犯人なんだろう。そう思って推理小説は袋綴じを見るたびに買った。週刊誌はそう思っても買ったことがない、念のため。
 そもそも題名にあるQEDって何だ?この作者の一連のシリーズ物の題名にQEDが付く。表紙に説明があった。QEDはラテン語で、Quod erat demonstrandum(証明終わり)の頭文字だそうだ。たぶんquodが「終わり」、eratはbe動詞のようなもの、demonstrandumは現代英語ならdemonstrationで「証明」という意味だ。
 冒頭、豪華マンションで病院オーナーの惨殺事件が発生する。日本刀で切断され首がない!出だしからワクワク感でいっぱいだ。久しぶりに本格物か。遺体の異常さは何を示すものか。これが日本への壮大な仕掛けとどう関わってくるのだ。読みやすいし、展開は速そうだ。期待は膨らむ。50ページくらいはそう思っていた。
 しかし、薬剤師・桑原崇と御名形史紋の2人の探偵役(同じキャラ)が登場し、神話や三種の神器、神社仏閣などの薀蓄を傾けるあたりから頭が混乱する。見たこともない漢字が羅列される。最初に出てきた時だけルビが振られるがあとはルビなし。いろいろな神や命(ミコト)、尊(これもミコト)が登場する。よく知られているイザナギノミコト、スサノオノミコトも漢字で伊弉諾尊、素戔嗚尊と書かれる。古事記や日本書紀なども古典からの引用文も多い。読むスピードがガクンと落ちた。疲れる。
 それでも我慢して読んだ。薀蓄の部分はほとんど頭に入らないが、肝心の犯行の動機と犯人は徐々に分かってくる。もちろん作中の探偵役の推理によるものだ。犯人はもう1人も殺す。連続殺人事件の様相を呈す。まあ、連続殺人はミステリーのお約束ごとだからな。
 そして、なんと袋綴じを読む前に、犯人も、動機も、なぜ首を切ったかなど、全てが解明されるのだ。袋綴じの前にQEDか。いったいこの袋綴じの意味は何なのだ!
 しかし袋綴じはだてではなかった。「いったい誰が、こんな壮大な仕掛けを日本に施したのか?」、この意味がよく分かる袋綴じだった。推理小説の謎解きではなく、歴史の謎解きだった。作者はよくこんなことに気が付いた。よくこんなにまで事実を調べた。作者の慧眼に敬服。ナスカの地上絵ならぬ日本列島地上・絵図だった。
  

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