乙 一
2007年2月21日(水) 「GOTH僕の章」(乙一・著)を読む |
ジャンル不詳の小説である。ミステリー?ホラー?青春ライト・ノベル?どれでもあるし、どれでもないような小説だ。多分、GOTHとはGothic(ゴシック)のこと。つまり、怪奇や超自然などを特徴とするゴシック・ミステリーやゴシック・ホラーの一種なんだろう。なるほど、どれも奇妙な、グロい、そして怖い小説である。好きな人にはたまらないだろう。 「GOTH」は第3回ミステリー大賞受賞作。それを文庫本2分冊した1冊が「GOTH僕の章」だ(もう1冊はまだ読んでいないが、「GOTH夜の章」)。「リストカット事件 Wristcut」、「土 Grave」、「声 Voice」の3篇が収録されている。全く別々の事件を扱うが、高校生カップル「僕」と森野夜が共通して登場する。「僕」はヒトの手を集めたり、死人の現場に立ちたがる猟奇的な人間のようだ。 「リストカット事件」では、手に異常に興味を示す高校教師が登場する。被害者を殺さずに手首から先を切り取り冷蔵庫に保管しているのだ。相当に気色悪い。次の犠牲者は森野夜かと思われるが、痴漢撃退スプレーで難を免れる。「僕」は先生の家に忍び込み、冷蔵庫から手をすべて盗み出し、自分の庭に埋める。「僕は今でも彼女の手に見とれる。僕が彼女の手を欲しいと思ったのは〜」。やはり「僕」も異常である。 「土」は、生き物を埋めるという妄想に取り付かれた男の物語。この作品は1人称記述はなく、普通の3人称記述であるが、「僕」と思しき人間は登場するし、森野夜も埋められてしまう。ラストに判明するこの異常な男の正体にもびっくりする。手を集めていた高校教諭以上にびっくりする。 ショッキングな始まりである。近所の子どもを生きたまま棺おけに入れ庭に埋めるのだ。息出し用の竹筒を2本立て、かすかに会話もする。やがて息出し筒から水を注入し溺死させてしまう。完全犯罪成立である。 3年後、今度は女子高生を生き埋めにする。生徒手帳から森野夜という生徒らしい。そして森野の友人「僕」が登場する。棺おけの中、女子高生の声が聞こえなくなった。死んだようだ。しかし「GOTH」の主人公というべき人間が死んでいいのか。ラストの3行も相当ショッキングである。こんなストーリー考える乙一(おついち)という作家も、かなりアブナイ人間ではなかろうか。 「声」では、北沢夏海の姉、博子が殺害される。廃墟で切り刻まれるという猟奇的事件だ。魔の手は妹にまで及びそうになる。そして森野夜にも。ここで登場するのが「僕」と、夏海の先輩であるという神山樹。犯人は手首を庭に埋めた「僕」なのか?それとも神山樹か?あるいは「僕」と神山樹は同一人物か。廃墟で争いのシーンでは男は確かに2人いたはずだ。「僕」と樹。斜め読みで2度目読み返したが、読解力の欠如か、この小説の秘密が分からなかった。悔しい! |
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