岡嶋 二人


2002年9月23日(月) 「殺人!ザ・東京ドーム」(岡嶋二人・著
 世界初のドーム型球場は65年に創設されたUSAテキサス州ヒューストンのアストロドームだそうだ。日本のドーム型球場は88年(平成元年)の東京ドーム(巨人)が最初である。この後、93年に福岡ドーム(ダイエー)、97年に大阪ドーム(近鉄)と名古屋ドーム(中日)、99年には所沢球場のドーム化(西武)、01年に札幌ドーム(日ハム)が建設され、日本のプロ野球12球団のうち、6球団の本拠地がドーム球場となる。
 「殺人!ザ・東京ドーム」は東京ドームが完成した88年に執筆されている小説であるから、東京ドーム人気に便乗した作品と言えるかも知れない。作者は「おかしな二人」をもじった岡嶋二人という井上泉(現・井上夢人)と徳山諄一(現・田奈純一)の二人である。ちょうと漫画家の藤子・F・不二雄のように二人の合作で作品を発表している。
 ドジヒロと言われ汚いと言われ、子どもの時から嫌われさんざんバカにされ続けた主人公・敏弘。閉じこもり型人間の敏弘の唯一の楽しみは山の中に入り虫をピンに止めて写真を撮るというもの。少々サディスティックな面も持ち合わせる。そんな敏弘が偶然、南米産の猛毒クラーレを手に入れたことから、人間が変わったように、世の中に復讐するかのように東京ドーム・巨人阪神戦で無差別の殺人を繰り返す。
 88年当時の巨人、阪神の選手が試合描写の中で実名で登場する。少し懐かしさを覚えながら読み進める。内容が分かりやすくテンポの速い小説である。推理小説というより、始めから犯人が登場する犯罪小説であろう。
 この小説は引きこもり人間が社会に対する不満から殺人事件を繰り返すという社会性を持つが、いじめられ人間の主張なり叫びが大きく取り上げられているわけではない。弱者への暖かい作者の気持ちが表されているでもない。あまり感情を移入することなく、引きこもり人間を犯罪者とする純粋な娯楽作品に仕上げてある。後味がすっきりしないのはそのためであろうか。


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