荻原 浩
2005年2月6日(日) 「誘拐ラプソディー」(荻原浩・著)を読む 楽しかった |
「大誘拐」(天藤真)や「リミット」(野沢尚)など、誘拐ものミステリーも好きなジャンルである。普通に書いたらありきたりになる誘拐もの。オリジナリティはもはや不可能と思われるが、どっこい、最近読んだ「犯人に告ぐ」(雫井脩介)など、まだまだオリジナリティ溢れる作品もある。 「誘拐ラプソディ」はコメディに徹した誘拐ミステリーだ。ゲラゲラ笑いながら読んだ、あの「大誘拐」の路線である。「大誘拐」で誘拐したのは、名古屋の大富豪のおばあさんで、身代金はなんと100億円だった。「誘拐ラプソディ」でたまたま誘拐した子供は、埼玉県最大のやくざの一人息子で、身代金は、最初1000万、考え直して5000万。犯人は、金ない家ない女ない、あるのは借金と前科だけの、今風に言うと、”負け組み”のさえない中年男だ。 犯人の名前は伊達秀吉。間抜けな誘拐犯の名前にしては立派過ぎる名前だ。幼くして死んだ、弟、秀次のエピソードは少しほろりとさせられる。そして誘拐される子供の名前は伝助。なんというネーミング。しかも、伝助の親(ヤクザの親分)の居住地は大宮だ。ムム、この設定は意図したものか、それとも偶然?でもこの都市と子供の名前の妙はかなりの年配者でなければ分からないシャレ。少なくともこのMyDiaryを読んでくれている人の中で分かる人はいないだろう。 結局、秀吉は警察はおろか、ヤクザや、中国マフィアにまで追われる羽目になる。ハードボイルド風に追っかけ、追っかけられるシーンが連続するが、そこはコメディ。にんまり、ニヤニヤ、クスクス、そしてゲラゲラ笑える展開となる。そして、誘拐された6歳の子供との能天気な会話も楽しい。 読み終わって、あ〜、面白かった、と思える小説である。肩肘張らず、寝っ転がって読んでください。ヤクザ組織ヤマタ組ナンバー2のチェリーちゃんのキャラ、最高! 蛇足。伊達秀吉の読み方は、もちろん、ダテヒデヨシだ。伊達藩の「伊達」を読めない大人がいるものかと思うが、実際にいた。ある友人、伊達男(ダテオトコ)を、なんと、「イタチオトコ」と読んでしまった。臭い男なのか。ああ、恥ずかしい。だったら、テニスの伊達公子は、イタチキミコと読むのか。 |
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