小川 洋子
2006年4月9日(日) 「博士の愛した数式」(小川洋子・著)を読む |
作者は早稲田大学第1文学部卒の女性作家。文系人間が数学を題材にハートウォーミングな小説を書いた。交通事故により80分しか記憶の持たない数学博士と、そこの家政婦、そして彼女の子どもルート(博士が付けたあだ名)の3人の愛の物語である。恋愛でもない、親子愛、仕事愛でもないのだが、3人はそれぞれ三角形の一辺みたいに、何かの愛によって強力に結びつく。 博士が語る数学の面白さは数学嫌いの人にも理解されやすい。ほろりとさせられたり、読後感がさわやかなすぐれた小説であるが、数学の解説のページも、面白いし、読んでいて楽しかった。もちろん数学が苦手な人でも、この本の面白さや価値は変わらないと思うので、ご心配なく。 「私」と博士を結びつける220と284の関係とは?約数の和がお互いの数となる「友愛数」だった。滅多に存在しない組み合わせで、フェルマーもデカルトも一組ずつしか見つけられなかったとか。 江夏の背番号28(博士の記憶は1975年で途絶えている、それ以降の記憶は80分しかもたない)は、約数の和も28(1+2+4+7+14)であり、こちらは完全数と言うのだそうだ。一番小さな完全数は6であり、28の次の完全数は496だそうだ。完全数はまた連続した自然数の和で表すことができる。6=1+2+3、28=1+2+3+4+5+6+7など。28の約数に28は含まれなかったかな? 1+2+3+・・・10=55の算出方法に3通りあった。つまり、ポピュラーな「10+9+8+・・・1を加えて2で割る」以外にあと2通りもあった。その中で三角数(三角関数ではない)から導き出す方法がある。三角数もあれば四角数もあるか?ある。だがこの本では四角数については触れられていない。 素数の秘密とは?素数は2以外は奇数である。17、19とか41、43など続きの奇数を双子素数と言う。2以外のすべての素数は二種類に分類される、つまりnを自然数として、4n+1か、あるいは4n−1か。なるほど。たとえば、素数97は4×24+1である。 714と715の秘密。714×715=510510=2×3×5×7×11×13×17、つまり最初の7つの素数の積に等しい。また714の素因数の和と、715の素因数の和は等しい。714の素因数を加えると、2+3+7+17=29。715の素因数を加えても5+11+13=29。 eのπi乗に1を加えるとゼロになる。eとは自然対数と言うのだそうだ(これは難しくて全く分からない)。そのほかに、ゼロを発見した偉大なインド人のこと、1993年にイギリス人大学教授によってフェルマーの最終定理が証明されたこと、などが紹介される。 この物語の重要なアイテムのもう1つが阪神タイガースだった。阪神タイガースも数学と動揺に3人に関わってくる。どんな関わり方?是非読んでみて下さい。 |
|