法月 綸太郎

2005年4月3日(日) 「生首に聞いてみろ」(法月綸太郎・著)を読む 「このミス」第一位の作品
 「このミス」は「このミステリーがすごい」の略である。宝島社で募集する「このミステリーがすごい大賞」というのもあるが、毎年発表される推理小説を、読者の投票によりランク付けする「このミステリーがすごい」もある。2005年「このミス」第一位の作品がこの「生首に聞いてみろ」だ。
 その挑戦的な題名からはホラー系かと思われるが、本格的な謎解きミステリーである。作者と同じ名前の法月綸太郎(のりづきりんたろう)が作中でも探偵役、つまり主人公として活躍する。法月綸太郎は綾辻行人や有栖川有栖らと同じ京都大学出身の本格派(新・本格派という人もいる)の作家で、私の好きな作家たちである。
 有名な彫刻家、川島伊作が病死する直前に遺した作品(つまり伊作の遺作ってわけ?)は、娘、江知佳の直取り石膏像だった。ところが、彼のアトリエから発見されたこの石膏像にはなぜか首がなかった。石膏像の首がなくなるだけでは、このミステリーの題名と合わない。娘、江知佳への殺人予告か、そして江知佳の首も切断されるのか?
 「このミス」第一位ということで、かなりの期待を持って読んだが、細切れ読書には耐えられないロジックの展開だった。ラストも、解決編を読むあのカタルシスを感じることができなかった。一気読みではない細切れ読みのため、伏線やストーリーの流れがラストにうまくつながらないからだ。
 この作品には、他の作品にはよくある、登場人物に事件をまとめさせる表記や、箇条書き、表、図などの説明がない。本科派のファンには邪道、作家サイドからは、表現力不足と、あまり歓迎されない作り方かも知れないが、普通の読者からすると、時々、ストーリーをまとめてくれる登場人物がいると助かる。
 じっくりと読むことを楽しむ本格派である。起承転結、どの部分にも読者をわくわくさせる展開を用意してくれているが、長い日数をかけて読むべきではない。


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