似鳥 鶏 

2019年2月8日(金) 「叙述トリック短編集」(似鳥鶏・著)を読む 
 叙述トリックとは作者が読者をだますジャンルのミステリー。主人公が男だと思って読んでいたらラストに女であることが分かったり、時が現代だと思っていたら一昔前の物語だったとか。時にはフェアではないと怒りたくもなるが、ラストのどんでん返しを快く受け入れ、これこそミステリーの醍醐味だと思ったりもする。
 そんな叙述トリックの短編集である。作者が叙述トリックだと宣言するから読者はそのつもりでだまされないぞと思い読む。それでも結局だまされフェアではないと叫んでも、叙述トリックと銘打っての短編であり、十分フェアなミステリーとなるのだという。折原一や阿刀田高の作品は叙述トリックのものが多い。
 あまりネタばらしはしたくないが、ある会社のひと騒動を扱う作品は登場人物が1人を除いて全員再雇用の高齢者だったことが分かる。なんかおかしいのは働き盛りを過ぎた人たちのドタバタだったから。
 また、現実の犯罪だと思っていたら場所は映画館。犯罪者たちは映画のスクリーンの中にいた。もちろん観客もいて、読者は見事に?だまされるが、こんなのはあまり面白くない。
 珍しい名字の探偵役がそれぞれの作品に登場するが、読者はそのキャラクターを同一人物だと思う。しかし、その名字の人物が5人もいた、だなんてやはり怒りたくもなるな。
 まあ、短編だからしようがないか。綾辻行人の館シリーズのような叙述トリックの醍醐味を味わうには不満足な1冊だった。
 
  

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