モブ ノリオ
2004年10月6日(水) 第131回芥川賞受賞作「介護入門」(モブ・ノリオ・著)を読む この小説どこが面白いの? |
段落なしに何ページにも及ぶ、怒りや辛さや、いら立ち、不安の言葉、言葉、言葉。。自宅で祖母の介護をする29歳の孫から発せられる”介護体験談”は、ある種のリズムを持っているようだが、下品で低俗な言葉の羅列であり、およそ読みづらい。読んでいて疲れる。いったいストーリーはどこにあるの?ただ単に機関銃のように、下品な言葉が速射される。そしてつなぎは「YO、ニガー」という最大級の蔑称である。Fuckin'など、人前では絶対に言ってはならない下品な言葉も出てくる。 作中の”俺”はマリファナ中毒者で音楽(ロック)もやるパンク野郎。介護とは最も似あわない”人種”である。そんな29歳の孫が日夜、祖母を介護する。ただそれだけの作品である。悪ぶって、ふざけて、カッコつけながら、体制や福祉制度を批判し、家族や血のつながりも批判する。最初から最後までわめき続ける。そんな小説である。これが今回の芥川賞受賞作品なのだ。 それでも確かに芥川賞を受賞した作品。それなりに評価されたのだろう。受賞理由は何だろう。この小説のとりえは何だろう。私なりに考えてみた。選考委員の誰かも書いていたが、やはりその文体と筆致の勢い、音楽的なリズム感など、かな。リズムはヒップホップ調。言葉にラップ音楽的なパワーが感じられる。理屈ではない体感なのだ。パンク野郎と寝たきり老人の介護というミスマッチが、この文体だからこそ特徴的に印象付けられる。 面白くない小説ではあるが、また、単行本にしても売れない(だろう)小説ではあるが、苦労しながらでも読めば、なぜか心に重くひっかかるところもある。 8人の選考委員のうちの石原慎太郎の評:全く評価しない。「介護入門」はぎりぎりの入賞である。今回の選考は猛暑の故の夏枯れとしかいいようなかった。河野多恵子の評:全く意外だった。介護されている祖母、大麻、音楽、それらの関係に何の有機性もない。 |
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