三浦 しをん
2006年9月5日(火) 直木賞もう1つの受賞作「まほろ駅前多田便利軒」(三浦しをん・著)を読む |
芥川賞は正式には芥川龍之介賞。もちろん芥川龍之介は誰でも知っている。じゃあ、直木賞の直木っていったい誰なんだ?冒険家か。違う、それなら、植村直己だろう。冒険家に与えられる植村直己賞というのもある。 直木賞は、直木三十五(なおきさんじゅうご、年齢がそのままペンネーム)という作家を記念する賞である。直木三十五は主に時代小説を書いていた作家だという(ウィキペディア)。昭和10年に菊池寛の発案で芥川賞と共にスタートしたという直木賞であるが、記念とされた作家を比べると、芥川賞の方がずっと権威がありそうだ。直木三十五なんて読んだことないし。しかし現在ではどちらも、受賞はその後の作家活動を約束される、大変権威のある賞としてよく知られている。 今回の直木賞を受賞したのは、森絵都と三浦しをんの2人。どちらも女性である。三浦しをんの「まほろ駅前多田便利軒」は、多田と行天という2人の超個性的な男が営む便利屋家業から見た人間模様が描かれる。単行本では6編あるが、「オール讀物」に掲載の2編、「多田便利軒、繁盛中」と「働く車は、満身創痍」を読んだ。 文体が軽くとても読みやすい小説である。1話ずつの完結であるが、微妙に繋がっている部分もあるようだ。「働く車は、満身創痍」に突然登場するシンちゃんやルルーなどにあれ?と思うが、多分、その前に挿入されていた編で詳しく説明されている人物なのだろう。「多田便利軒、繁盛中」で登場し新しい飼い手の見つからない犬のチワワは「働く車は、満身創痍」にも出てくるから、その後に多田家?の一員になったのだろう。 「多田便利軒、繁盛中」のオープニングは、何これ?と思わせる。2ページ目の「そんなことはないよ、母さん」の意味をしばらく考えてみた。最初からもう一度読み返してみるが、まさか!いや、そのまさか、だった。後はもう、作家、三浦しをんの世界にずんずんと引き込まれる、なかなか見事なオープニングだった。 「働く車は、満身創痍」で依頼された仕事は、学習塾への子どもの送り迎えだった。映画、「マイ・ボディーガード」や「トランスポーター2」が思い出される設定だ(映画と違い依頼された子どもは”かわいげのないガキ”)。軽トラを多田が運転し、助手席に行天が座り、子どもを膝で抱えて送り迎えをする。この後の展開がいくらでも考えられそうな設定である。 親子の関係、親の見栄、いじめ、学校と塾、多田と子どもの擬似親子愛など、想像をめぐらせて読んでいる。と、突然とんでもない展開になる。突然、ハードボイルド。なんと、軽トラの窓ガラスに散弾銃が打ち込まれるのだ。やはり、「マイ・ボディーガード」や「トランスポーター2」だった。 シリーズでテレビドラマ化されそうな小説である。 |
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