麻耶 雄嵩 (まやゆたか)

   
2014年3月18日(火) 「貴族探偵対女探偵」(麻耶雄蒿・作)を読む  
 麻耶雄嵩(まやゆたか)は、あの怪作、「隻眼の少女」の作者だ。この本でも超絶技巧な荒業で読者を打ちのめしてくれるだろう、そんな期待を持って読んでみたが。。。
 貴族探偵と名乗っているのに、推理して事件を解決するのは使用人やメイド、運転手である。安楽椅子探偵のパターンだ。この貴族探偵、女たらしでキザで傲慢、いつも別の女を連れてくる。好きになれない貴族探偵だ。
 一方、彼と対決する女探偵は高徳愛香。5話とも同じ現場に都合よく、”たまたま居合わせ”、犯人当て推理で対決する。と言っても愛香は、勘違い、早とちり、思い込みなどにより貴族探偵の使用や運転手などに負けてしまう。またかい、という展開が4話も続く。女探偵の愛香の視点で語られ、読者は愛香に肩入れし、彼女を応援するが、残念な結果になる。愛香、かわいそう。
 それでも、5話「なおあまりある」では、彼女の推理が冴える。やっと女たらしの貴族探偵の鼻を明かしたと小躍りしたくなるが、ラストにオチが待っている。「えっ、そうだったのか、その事はもう忘れていた」と思うだろう。最後まで油断することなかれ。
 2014本格ミステリベスト10(「本ミス」、「このミステリーがすごい」の「このミス」ではない)の第1位だそうだ。それほどの面白さではない。寝転がって読んだり、だらだらと何日もかけて読むと面白さが伝わらない。むしろ読み続けるのが苦痛になる。読者は作者にバカにされているのか。私のロジックが理解できたかね、と。
 この作者、好きな人は好きなようだが、ミステリー初心者には難しいだろう。 
   
2010年12月16日(木) 「隻眼の少女」(麻耶雄嵩・著) 
 「第一部一九八五年・冬」と、「第二部二〇〇三年・冬」の2部構成。帯に、「古式ゆかしき装束を身にまとい、美少女探偵御陵みかげ降臨!究極の謎、究極の名探偵、そしてちょっぴりツンデレ!」とある。表紙の、萌っぽい水干姿の美少女の実写真。確かにこんな美少女探偵が活躍する推理小説なのだが。。
 思わせぶりな帯のコピーと表紙の実写。これらを見てこのミステリーの驚愕を想像できる人はいないだろう。とにかくラストはびっくりする。こんな荒技で解決するのか。いくらなんでもそれはないだろう!と叫びたくなる。コテコテ本格で、第1部でも解決は二転三転し、終わったはずの18年後、再びの惨劇が繰り返される。面白いことは面白いが、特に第一部、読み通すには忍耐が要る。
 閉ざされた寒村が舞台、古い因習にとらわれた旧家・琴折家。代々女系が支配してきた琴折家の人たち。その子どもたちが首切り殺人事件の被害者になる。犠牲者も多いが、登場人物も多い。名前も似たような名前だ(主だった女性には菜が付く)。家系図を見ながら、あるいは登場人物一覧を見ながら読み進む。屋敷の見取り図はない。読みにくいし、テンポもいささかのろい。特に第一部で何度か挫折しそうになった。
 それでも途中で投げ出したらミステリーファンの資格なし。新聞紙上の書評でも評価の高い麻耶氏の最新作である。古典的本格推理小説の最新作だ。あきらめてなるものかと、2週間ほどもかけた細切れ読書でも、とにかく第1部(260数ページ)を読み終えた。あんまり面白さは感じられなかった。理解に及ばない流れもあり、これが評価の高いミステリーなのか、と思った。
 そして、ケータイ電話も登場する18年後の第2部。こちらは第1部より少し短いが、次々判明する新事実に驚きながら、ほぼいっきに読んだ。特に探偵VS真犯人の勝負は興奮する。この真犯人を予想できた人はいただろうか。18年前も同人物が犯人だったなんて。これって、ミステリーとして、思いっきり禁じ手ではないのだろうか。書きたいのに書けない真犯人。ネタバレはダメ。第1部が大変だけど、読んで確かめるしかないでしょう。
 ところで、「ツンデレ」ってどういう意味?調べてみると、アニメのキャラクターの性格設定で、「普段はつんつんと無愛想な女性が、特定の男性と2人きりになると、でれっと甘えてくる」という意味なのだという。帯に偽りあり、かな。   

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