松岡 圭祐
2016年5月15日(日) 「水鏡推理Uインパクトファクター」(松岡圭祐・著)を読む |
![]() リケジョの星(まるであのS***細胞のOさん)vs文科省正研究調査チームの水鏡瑞希(一般職員、つまりヒラ)。ノーベル賞級の論文を科学誌に掲載した研究班リーダーの如月智美は瑞希の幼なじみだった。 勃発する研究ノート窃盗とねつ造疑惑。実験は再現不可能であることが判明し、論文はコピペ、写真の使い回しの疑いも出てくる。窮地に追い込まれる如月智美。マスコミにたたかれ、智美は人格障害のある嘘つきとまで言われるようになった。 幼なじみを救いたい。水鏡瑞希は海外にまで飛ぶ。共同研究者がインドの大学教授だったのだ。名前はバカンティ教授、いやアヴァリ教授だ。実験が不可能であることを知っていた教授だ。 ”研究における不正行為、研究費の不正使用に関するタスクフォースは平成25年8月、文部科学省内に設置。現在も実在する”のだそうだ。 「水鏡推理T」では地震予知、自動運転、宇宙へのエレベーター、震災がらみの不正などを、ことごとく瑞希が暴いてみせた。しかし、シリーズ2作目は人工血管FOVの不正を暴く、ただそれだけ。しかし、一気読みできる面白さである。切れた血管が自動治癒し、普通に繋がる実験が不正だと見破るくだりは、あれあれ、又も「TRICK」だった。これだけが興ざめする。 ラストは涙も出そう。そして幼なじみ智美のその後も良かった。後味のよい推理小説である。松岡圭祐のミステリー、まだまだ読んでいきたい読後感である。さわやかすっきりで、水鏡瑞希サイコーって思ってしまう。 ドロボーに入られ実験ノートだけが盗まれた真相は?ラスト、これに触れられてなかったと思うが・・。 |
2016年2月9日(火) 「水鏡推理」(松岡圭祐・著)を読む |
![]() 「一般職が将来めいっぱい出世できたとしても定年間際に年収900万円が限度であるが、総合職だと上限は2900万円。あつかいは比較にならない。総合職は将来の幹部候補であり、一般職は主に定型業務に従事し、総合職の補助的な仕事をすることが多い」、だそうだ。 主人公、水鏡瑞希は文部科学省のその一般職に就き、タスクフォースの一員である。”研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース”は、平成25年8月、文部科学省内に設置。現在も実在する」(本文より)。 ”研究 における不正行為・研究費の不正使用”ですぐ思い出すのが、STAP細胞だ。最近、あの女性が本を出して爆発的に売れているらしい。読んでいないし、読む気も起らないが、この期に及んで何を開き直っているのか、と思う。そんな彼女に、水鏡瑞希なら、どんな論理で”落とす”だろうな、と思いながら読んだ。本書では、同じような不正研究のテーマがSTEP細胞として登場する。 しかし、不正を暴く、その不正がちゃちである。まあエンタテイメント小説だから、目くじらを立てるのも何だが、一流の科学者があんな小道具やトリックで不正に研究費をぶんどろうとするのか。 宇宙へのエレベーターのトリックは笑える。地震予知の実験もあまりにアナログ。自動運転のトリック、小道具もしかりだ。真面目に読んでいくとトリック判明で一気に脱力感を味わうことになる。 クライマックスのバイオメトリクス遠隔監視操作システムは実用化できたら素晴らしい研究だが、それも水鏡により不正を見抜かれる。娘に頼まれ一般人を装い、実験の要員として参加した水鏡の両親がいい役だ。 気の毒なのは、無理やり悪役にされたような檜木室長や副大臣。水鏡は彼らの不正に真っ向から対峙し、胸のすく活躍を見せる。これはこれでとても面白いし、スカッとするのだが。。 しかし、これらのトリック暴きは、映画やドラマ、小説でもお馴染みに「TRICK」だ。巨根と貧乳コンビが活躍する、あの「TRICK」の種明かしじゃないか。村が消えたり、千里眼の女が登場したり、瞬間移動で殺人を犯したり。それを仲間由紀恵と阿部寛が暴いてスカッとさせる、あの「TRICKと同じだ。 実際の不正はあんなに簡単には暴かれないだろうが、最近のビル建築の杭の本数や強度不足、フォルクスワーゲン社の不正などを見ると、意外とばかばかしいほど基本的な所から不正が行われていることに気付く。こんな事で不正に税金が使われていたりするのか、と思うこともある。 真面目に研究している研究者をバカにしているという批判もあるかもしれないが、不真面目に研究をし、不正に国庫補助金などを横領しようとする科学者もいるだろうから、こんな小説が少しでも警鐘になればいい。 |
2003年11月3日(月) 「マジシャン」(松岡圭祐・著) |
ミステリーの読後感を書くのはずいぶん久しぶりの感じがする。全然読んでいないわけではないのに、なぜかMyDiaryへの記録は1ヶ月ぶりくらいである。読書の秋である。と言っても私の場合はほとんどミステリー。人に威張れるものではないが、時間を見つけて、細切れでもいい、朝読、昼読、風呂読、便読(?)、好きな小説を気ままに読んでいきたい。 さて、題名につられて即、買った「マジシャン」を読んだ。作者・松岡圭祐は「千里眼」シリーズや「催眠」で今や大ベストセラー作家。彼が本書で新しく作り出したキャラクターは15歳の天才マジシャン、里美沙希である。 彼女は、目の前でカネが倍になる、競馬の予想が100%当たる、借用書にサインと押印をさせる、など、詐欺師のトリックをいとも簡単に看破する。捜査二課(知能犯のセクション)の舛城警部補は彼女の特異な才能に助けられ、類まれ、大掛かりな詐欺事件の解決を図る。薄幸な沙希自身も超人気メジャーなマジシャンとして成功する足がかりを得る。 ストーリーの展開上やむを得ないと思うが、マジックの種明かしが何度も出てくる。最近はTVでも大評判のようであるが、マジックの種明かしはルール違反である。作者自身も後書きで「種明かしに反対である」と書いてはいるが、この小説では惜しげもなく種明かしを披露する。作者の薀蓄か。 マジック愛好者ならおなじみのテクニックや小道具、サムチップ、ギミックコイン、フィンガーパーム、リンキングリング、シェルコイン、シガレットスルーコイン、空中浮遊、カードマニュピレーション、バック&フロントパーム、コインロールなどなど、松岡氏自身もマジシャンなのか、相当詳しい。 ラストはタイムリミット型サスペンスで盛り上げる。意外なラストという訳ではないが、えっと思わせるひねりを聞かせたラストである。15歳の少女の描写にリアリティがないものの、小説として面白い。マジックに興味のある人ならなおさら興味深く読めるはずだ。 |
Hama'sPageのトップへ My Favorite Mysteriesのトップへ