今野 敏
2009年11月6日(金) 「ST緑の調査ファイル」(今野敏・著)を読む 今度は音楽ミステリー |
![]() 「翠の調査ファイル」はそのうちの1冊。STの紅一点、結城翠(ミドリ)が活躍する。読んではいないが「黄の調査ファイル」ではたぶん、山吹が事件を解決するのだろう。 余談だが、ST、科学特捜班で「ガッチャマン」を思い出した。ガッチャマンは科学忍者隊。ST、科学特捜班と字面と雰囲気が少し似てないこともない。(氏名が)5色の登場人物が活躍するで、「秘密戦隊ゴレンジャー」を思い出した。ゴレンジャーにも確か女性が一人いたはず。もちろん両方ともこの本の内容とはまったく関係ない。 名器ストラディバリウスが盗難にあった。1億円もするバイオリンだ。リハーサルで楽団員の前で弾いた。まぎれもないストラディバリウスだった。それが、ホテルに帰ったらケースはそのまま、中身がすり替えられていた。信頼できる2人のボディガードが常に監視し、彼らが手に持って運んだのに。いったい誰がいつの間に。 しかしミステリーとしてはちゃちな謎だ。素人でもすり替えの推理は何通りか考えつく。もともとストラディバリウスはケースに入ってなかった、リハーサル会場では別のケースから本物を取り出したなど。 やっと殺人事件が起こるのは中盤を過ぎたあたり。ドアチェーンがかかっているホテルの一室で殺されていたという密室モノ。カッターでチェーンを切り中に入ったが、もちろん犯人はいない。犯人はいったいどうやって外に出た。この謎だって想像がつく。というか、それしかないだろう。外からチェーンをかけることなどできないのだ。 犯人も容易に予想がつく。被害者も、たぶんこいつが殺されるだろうなと思われる人物だった。この2人だけが台詞と行動が特異、悪人っぽかった。他の登場人物はすべて善人として描かれる。こんなに予想がしやすいミステリーも珍しい。 ラスト、コンサートの描写がすばらしい。音楽を文字で表現するのは難しいだろうに、音楽を聴いているような気分にさせてくれる。長く余韻に浸ることができる。チャイコフスキーとメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲を聴いてみたくなった。 |