小池 真理子 

2004年4月11日(日) 「間違われた女」(小池真理子・著)を読む
 今で言うストーカーが題材となるミステリー。88年の作品だからまだストーカーという言葉が存在しなかった時代である。病的ストーカーは、純潔な愛の狂気(エロトマニー)が発症させる一種のパラノイア(偏執狂)であると言う。自分がある特定の人に愛されていると確信したり、歌手やタレントの恋人になったと信じたりする恋の病である。他から見ればどうしようもないバカな行為であるが、本人は純粋で真剣である。
 そんな男・秀実が亜紀子に愛されていると信じ、彼女を執拗に追い求める。しかし実際は亜紀子の後に同じマンションに入居していた雅子が亜紀子に間違われていた。愛称はアコにマコ。アとマはよく似ている片仮名である。
 最初は題名通り”間違われた女”である雅子の悲劇的なストーリー展開を予想して読み続けた。が、中ほどから予想外の、まったく違った展開を見せる。第三の、別の女性が登場し、秀実はこの女性にも純潔な愛を注ぐ。困ったことに、こちらは相思相愛の仲に進展する。このあたりから”間違われた女”である雅子は全然登場しなくなる。ラストでまた関わってくるのか、と期待させるのだが。。
 いらいらさせ、気持ち悪くさせ(この男は危険だ、すぐに逃げて、しかし相思相愛?)、後味悪いラストに一気に突き進む。しかもプロローグの”切れた”男をまた登場させ、なんの脈絡も関連もないまま、無理やり殺人者に仕立て上げる。”間違われた女”雅子も亜紀子もラストに関わってこないじゃないか。題名が生きてこないストーリーにがっかりである。 

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