勝目 梓


2002年6月20日(木) 「雨の逃亡者」(勝目 梓・著)
 宮古市の地名や飲食店、ホテルなどが実名で登場するごトラベル・ミステリーである。主人公は酒好きで好色という型破りの私立探偵、秋津慎平。捜索のために時には暴力も辞さない男だ。秋津は別れた2度目の妻に頼まれ、彼女の雇い主である反町恵子の失踪した夫の行方を追う。手がかりは彼からの手紙の消印、岩手県の宮古市だ。
 「宮古シティホテル」に連泊し、「志むら寿司」でおいしい寿司に舌鼓を打つ。その後に行くスナックは大通りの雑居ビルの描写から、あそこのビルだと分かる所だ。が、「エル」や「べべ」といったスナックが実在したかどうかは分からない。秋津の調査は、末広町、黒田町、西が丘、田鎖、宮古市運動公園、重茂、磯鶏、桑ケア、藤原埠頭、浄土が浜、真崎など、宮古市の主だった地名がこれでもか、っていうくらい登場する。作者の宮古への思い入れがたっぷり感じられる。
 トラベル・ミステリーではあるが、推理小説というよりは軽ハードボイルド小説だろう。一部、官能小説の様相も呈す。秋津が事件の真相をつかむのは彼の推理からではない。なんと、リンチにより相手から自白させるという乱暴さ。こんなのあり?って思ってしまう。それでもラストは殺人の告白などあり、一応お決まりどおりエンディングとなる。
 1つの町をこれほど詳しく描写するトラベル・ミステリーも珍しい。宮古の人だったら絶対読むべし!


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