金原 ひとみ

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2004年3月2日(火) 「蛇にピアス」(金原ひとみ・著)を読む
 第130回芥川賞受賞作品である。作者の金原ひとみ氏は1983年8月生まれというからまだ20歳。小学4年から学校に行かなくなったとか。高校も中退しているそうだ。
 受賞作品の「蛇にピアス」は一人称小説である。自分の体験がどこまで入っているのか分からないが、受賞インタビュー時の彼女が、作品中の「私」、中沢ルイのイメージとダブると感じたのは自分だけだろうか
 名前も年齢も分からないまま同棲生活を続ける二人。男はかなりのパンクである。男に影響されてか、女も、一般人には理解しがたい自虐的とも言える行動を取る。舌ピアス、スプリットタン(意味は作品の最初の数行を読めば分かる)、そして背中に彫る龍と麒麟の入れ墨。アル中ぎみであり作品後半には拒食症となるなど、もうどうしようもない”哀しい女”である。
 さらに、相手のパンク野郎もすごい。ピアスや入れ墨はもちろんであるが、キレた殺人を犯し、男から男へのレイプ(被害者)、そしてついにはおぞましい死体に変わり果てる。彼をレイプして殺した犯人は誰か?ミステリー的な味付けもラストに残す。
 肉体を切り刻む(入れ墨やスプリットタン)表現が痛い!親からもらった肉体をそんなに改造してどうするんだ!この作品を読み終わっても、自虐的行動に走る20歳前の若者の行動は理解できない。
 しかし、作者は、そんな悲惨で救いようがないストーリーを、分かりやすい短文を連ね、淡々と書き綴る。主人公と等身大と思われる作者は、他の40代、50代の作家には真似のできない、一部現代若者の風俗・日常を丹念に表現する。それが小説として実に面白いのだ。まさしく芥川賞受賞作品。彼女の次作がどんな作品になるか楽しみである。