金久保 茂樹 

2009年9月8日(火) 「遠野・八幡平 殺意の鉱脈」
 犯行現場となるのが遠野の名勝、続石。そして時刻表トリック上で鍵となるのが綾織の岩手二日町駅だった。読んだら行ってみたくなり、即、行動に移す。自由人の特権。
 国道396号線沿い、千葉家の駐車場から500mほど下がった所に続石駐車場がある。白い公衆トイレが目印だ。車をそこに置き、けっこう急な山道を10分ほど登る。と、目の前に現れる巨岩。2つの台座の石に横7mもある巨岩がバランスよく鎮座する。よく見ると左の方には隙間がある。それでもグラグラするわけではない(グラグラしたら怖すぎるヨ)。昨年の2つの大きな地震にも動いた形跡がないという。
 周りは杉林。早池峰山のような岩場でもないのに、この巨岩は誰がどこから持って来て、どうやってこんな形にしたのだろう。なんのために?大型クレーン車でもなければ上に石を載せることなどできない。武蔵坊弁慶が持ち上げたという伝説があるが、弁慶が10人もいたってこんな岩を持ち上げることはできない。見れば見るほど不思議な巨岩である。矢追純一ならUFOから降りてきた宇宙人の仕業と仰々しく言うだろう。
 そして岩手二日町駅。ホームに小さな待合室があるだけの駅だ。駅前に自転車が6、7台停まっている。なるほどここから続石まで自転車で10分ぐらいか。犯行後ここに戻り遠野駅へ。1分間ですぐ盛岡行き快速はまゆり2号に乗り込む。なるほど、なるほど。
 犯人は21:45発の青森行き寝台特急あけぼのに乗った。翌日大館で花輪線に乗り換えたと言い、10:40松尾八幡平駅に現れている。両方の駅で見送りと出迎え者の証言があるから、この間のアリバイはあると思われる。なら、続石で7時半頃の犯行は不可能なのか。
 今年の6月に発行されたばかりの文庫本書き下ろしだ。もちろん池袋・大槌間の高速夜行バスも走っている。釜石の中村屋の社長も実名で登場する。民宿*の菊池さんも。もちろん犯人は実在する人を連想させる人物ではない。
 作者の金久保氏は東京出身。遠野への取材旅行が念入りだったようだ。遠野市、曲がり屋、遠野物語、菊池さん、釜石線(花巻で車両の進行方向が逆になるは伏線だった)などを、ストーリーに巧みに散りばめながら、面白い旅情ミステリーを書いてくれた。最後に犯人のどんでん返しもあるからたいしたもんだ。遠野の皆さん、岩手の皆さん、お勧めですよ。 

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