海堂 尊
2008年2月16日(土) 「チーム・バチスタの栄光」(海堂尊・著)を読む |
第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した作品であり、作者の海堂尊(かいどうたける)は現役の医者だ。竹内結子と阿部寛主演で映画化もされ、その映画も先週公開されたばかりだ。こちらも、まもなく観る予定。 バチスタとは心臓手術の1つで、肥大した心臓を切り取って小さく成形し、心臓の収縮機能を回復させるものだそうだ。創始者であるブラジル人医師、R・バチスタ博士の名前を取った術名であるという。リスクの高い手術で成功率60%というが、チーム・バチスタは成功率90%以上。 東城大病院のチーム・バチスタは桐生医師をチーム・リーダーとするこの手術の専門チーム。次々と成功を収めていたが、ある時から立て続けに3件術中死が起こる。たまたまなのか、医療過誤なのか、はたまた故意によるもの(つまり殺人)なのか。 ここで調査を依頼されるのがお気軽医師、田口医師(血を見るのが怖い、上昇志向なし、映画では女医となり、竹内結子が演ずる)。通称グチ外来と揶揄される外来の精神科医だ。チーム・バチスタのメンバー1人1人に聞き取り調査を行う。当然、このダメ医師が主人公、つまり探偵役と思いこみ、読み進めるが、おっと、どっこい、かなりキャラのたった白鳥(映画では阿部寛)というスーパー主人公が後半に登場する。 この白鳥というキャラクターがすごい。ロジックモンスターと評され、まさにシャーロック・ホームズ。ところが相反するというか、かなりの天然ボケの側面も持つ。あるいは意図的なのか。ワトソン役の田口とコンビを組んで医療現場での犯罪にメスを入れる。2人の会話が楽しい。大笑いだ。 巷で評判のミステリーであり、本も単行本、文庫本ともに売れ行き好調らしい。なるほど、面白い。ギャグ的面白さもてんこ盛り。このジャンルでは珍しい。クライマックスもあり、どんでん返しらしき展開もある。もちろん犯人当てや謎解きも一応ミステリーとして整っていると思う。じゃあ、大満足、満点、欠点なしのミステリーかと言われると、いや、ちょっと違うかな。 不満が残る。後半の解決を見た後が長すぎる。犯人も意外性がなく、途中から読者に示される。意外な犯人とトリックを解明し、スパッと終わって、ああ面白かった、というカタルシスを感じるエンディングではない。「21章敗戦処理」(20ページ)、「22章後日談」(28ページ)、そして「終章」(6ページ)の3つの章をもっとすっきりさせてもよいような。 それでも人に薦めるかと問われれば、絶対薦めるミステリーである。 |