岩城 亮
2010年1月11日(月) 「空くじ空釣り空夢日記」(岩城亮・著)を読む |
岩城亮氏(お世話になったK先生)の平成16年4月から同年12月までの日記風エッセイ集である。コンテンツをパターン化させ、辛口批評、釣果、宝くじ、家族・地域・ペット、そして短歌・俳句・川柳などが毎日綴られる。どこからでも楽しく読める。 @辛口批評について この年に起こった出来事は、イラク人質事件、政治家の年金未納、人格否定発言、拉致被害者帰国、プロ野球再編とスト、参議院選挙、アテネオリンピック、駒大苫小牧優勝、イチロー262安打、ロシアの学校占拠、新潟中越地震67人死亡、スマトラ沖地震で17万人死亡など。僕は久慈にいた年だ。 岩城氏の歯に衣を着せない、反骨精神モロの記述は読んでいて小気味よく、時には目からウロコが落ちた(拉致事件の記述など)。ブッシュのポチ→小泉、審判の不正ジャッジがなかったら昭和43年夏優勝旗はとっくに白川の関を越えていた、この人物(巨人軍オーナー)態度が不遜、驕り、横柄etc。色々なことを想いながら読む岩城氏の辛口コメントに快哉。 A釣果について 氏の釣りは趣味の域を超えている。セミプロである。奥さまもすごい。夫唱婦随の釣り三昧。うらやましい。只出漁港で40センチのアイナメ、45センチのマガレイ、唐桑漁港では80cmもある大ダコ、小石浜漁港でサバ30数匹など、すごい釣果だ。巻末には4月〜12月の釣果一覧あり。それによると、カレイ190、アイナメ127、ソイ・メバル38、サバ270、タコ2、チカ・タナゴ・アジ∞とか。カモメも釣った、小船も釣った等、楽しい記述もあり。僕も釣りをやってみたくなった。時間はあります。K先生、ぜひ弟子にして下さい。 B宝くじ購入記について ミニロトやロト6、ナンバーズなどはほとんど毎週買ってるようだ。時期になるとジャンボ宝くじも。1等当選を夢見て使い道まで考える岩城氏。T高校に奨学金、同窓会へ寄付、イラク人質奪還費用などと、他者への思いやり予算も想定済みだ。5月は獲得賞金としてロト6で7400円と記載されている。他の月は記載ないが、もしかしたらキャリオーバー4億円当たったの?宝くじで高額賞金ゲットの秘訣はとにかく買い続けることだとか。 C家族・地域・ペットについて この年に息子さんは岩手県の教員採用試験に受かり、結婚した娘さんはご懐妊とか。おめでとうざいます。控えめに書き、控えめに喜んでいるところが岩城氏らしい。奥さまが地域の行事に参加したり、近所の板金屋さんのこと、釣り仲間のこと、昔の同僚たち、郷里茨城の友人知人親戚のこと。飲み過ぎて二日酔いのことも。 D短歌・俳句・川柳など 数多くの歌の中で、奥さまとのことを詠んだ歌に心を惹かれる。優しさが溢れており、とてもいい歌だと思う。 われが詠み妻が選びし六十路歌 詠むたびごとに心通いぬ 亡き義父(ちち)の命日に釣れし大ガレイ しばし見つめて義母(はは)に贈りぬ 銭形の謎解く如く道糸の 絡み今宵は妻と解き行く 迎え来る妻の笑顔が魚呼ぶ 時には女神と思う日もあり ニコニコと美容院より妻戻り いかが、とポーズ居間に花咲く 釣れぬ夜は妻の迎えを待ちわびつ 昔覚えし星座探しぬ 我が竿 妻がタモ持つ砂子浜 絆深まる釣る度ごとに 負けまいと 竿振る妻や 背に蛍 最後に笑ってしまった親父ギャグ編を一つ。バクダッド 『爆弾ダド』と 名が悪き |
2008年3月16日(日) 「津軽の女」(岩城亮・著)を読む 小説を読んで久しぶりに泣いた 一気読み |
「灯籠の女」(推理小説)、「う・ら・ぎ・り」(社会派小説)に続く、岩城亮氏(一関で元同僚だった英語のK先生)の第3作目は、なんと純愛小説だった。「う・ら・ぎ・り」の主人公でもあった洋三(K先生自身であろう)が50年前に味わった悲恋と、その後(現在)の悲しい結末が描かれる。終盤には何度も涙をぬぐった。偶然に頼りすぎるきらいはあるが、ストーリーテラーとしてK先生の能力は留まるところを知らない。ページを繰るのが止められずついに一気読みしてしまった。明日は大事な日なのにこんなに夜更かしして大丈夫か。午前2時。。 純愛の始まりは雑誌の文通欄を介して始めた文通だった。昭和30年代、茨城出身の洋三が春日部高校2年、智子が青森高校1年の時だった。どちらも屈指の進学校として名高い高校である。洋三が青山学院大学に入学し、智子は家庭の事情で青森市内の会社に就職する。その後も文通は続く。洋三は大学4年生になり、岩手の教員採用試験を受ける。さらに北海道の採用試験も。北海道に行く数日前、2人は青森市でついに出会いを果たす。何日間か青森に滞在し、浅虫でのデートなどを経て2人の愛情は深まる。(実は私も高校時代、文通相手の女性に1度だけ会ったことがある。でもただそれだけ)。 智子の父親の気持ちは図りかねるが、いずれ将来を約束する2人。ここまではまあ順調だった。やがて洋三は教員採用試験、岩手も北海道も合格する。岩手の方を選び陸前高田にある氷上高校(高田高校がモデルであろう。K先生の初任校も同校)に赴任する。商業科のクラスを担任をし生徒指導課、そして野球部の監督を務めながらも(これらもK先生の経歴とかぶる)、智子との愛を育んでいく。しかし2人の恋は燃え上がったところで思いがけない展開を迎える。文通も途絶えた。 例によってK先生は、面白い小説にも鋭く教育問題や社会問題を取り上げて、自身の考えを小説の中で展開する。これがまた説得力があり、小説に重みを増している。「津軽の女」では、野球部の監督とOBや後援会との確執、審判の地元贔屓の判定、生徒指導のあり方、問題行動の処分の仕方、教師と生徒の関係、教育の三権分立など、うんうんと頷きながら、時には笑いながら読み続ける。 そして中盤から終盤にかけてストーリーはドラマチックに展開する。智子が難病で死ぬのか?否、今流行りのそんなに安易な、ベタな展開ではない。しかし読むのを止められない悲しい、悲しい面白さ。 前2作の場合もそうであるが、どこまでがフィクションか分かりかねるが、かなりの部分がK先生の自伝のようでもある。茨城での生い立ちは「う・ら・ぎ・り」でも紹介されたとおり。洋三の娘が結婚して小田原在住というのもK先生の現在と同じだ。ただし息子は母親と春日部市で生活しているというのと(K先生の息子さんは盛岡で高校の教師)、退職と同時に妻と離婚させられた、洋三が癌に侵されているなどは完全なフィクションであろう。 K先生、177ページの「ザ・ラスト・ストロー」の意味・面白みが分かりませんでした。237ページの「魘される」の読みも分かりませんでしたが、ルビが必要な文字ではなかったでしょうか。 K先生、筆を折るなどと言わずに、構想が完了したという、「漁り火の女」、「東京炎上」、「虚飾の森」(一番書きたいという教育界を舞台にした)を是非完成させてください。待ってます。 |
2007年1月17日(水) 「う・ら・ぎ・り 第一部小学校編」(岩城亮・著)を読む |
陸前高田市気仙町在住のK先生が、「灯籠の女」に続き自費出版した小説である。題名は「う・ら・ぎ・り」だが、「うらぎり」と表裏一体をなす「いじめ」も、当然ふんだんに描かれる。 時代は、まだ戦争の影を残す昭和24年(主人公洋三が小学校に入学する前)から昭和30年(洋三小学校6年生)まで。場所は茨城県のある農村だ。内容は、多分K先生の生い立ちであり、教師、友人、肉親からうけたうらぎり、いじめの数々が中心となる。つまり、K先生自身の自伝的小説、それもフィクションより、事実の方が断然多いだろう(根拠は別にないが)、と思われる小説だ。 洋三は様々ないじめを受ける。特に担任の先生、原田先生からのいじめは幼い洋三の心をひどく傷つける。子ども心にショックであったろう。今なら大問題だ。そこまでやるか、という陰湿ないじめである。ばあちゃんのいじめ、嘘は、まだ許せる。幼い洋三がよくもいじけず、素直な、現在のK先生のような心の広い人間に育ったものだと思う。 それにしても洋三のキャラクターは現在のK先生そのものだ。やんちゃ坊主、餓鬼大将、いたずら大好き、反骨精神旺盛、義侠心あり、少しのワル、しかし本物のワルにはなれない、年上の女性大好き。まさに50数年後のK先生そのものではないか。洋三がそっくりそのまま大人になって、現在のK先生なのだ。よく分かる、分かる。ほほえましく、時にはどっと笑いながら、そして母の愛にはジンときたり、楽しく読めた。 現在のいじめ横行、命軽視の世相の中、小中学生への教材にもなるな、と思う。命の大切さを教えるなら「過保護」(スズメの死を扱う)、母の愛は「悔恨の学芸会」、いじめは、やはり原田先生の一連のページだ。 印象的だった項目:野田のくれたナイフ(誰が持っていったのか)、めったに当たらない5円のクジ(懐かしい)、涙のコッペパン、菊地先生(陸前高田出身らしい)の体罰、玉子焼きの悲哀、父の弁当事件、スズメへの虐待そして死、野田の不登校、その後の非業の死。各章ごとに当時の時代背景、世相を織り交ぜながら、洋三のドラマティックな、激動の小学校生活が描かれる。面白かった。 昨年末12月31日、岩手日報県内総合ページにK先生の写真入りで、この本が紹介されている。Web版には写真はないが、記事はこちらをクリックしてご覧下さい。 |
2006年4月30日(日) 「灯籠の女」(岩城亮・著)を読む なかなか本格的! |
作者の岩城亮氏はかつて一関市で同僚だったK先生。茨城県出身で、指導教科は英語。野球部の監督を務めながら、毎日、旺文社と研究社の「大学入試問題正解・英語」の問題を解いていた。「大学入試〜」で出版社が発表する大学入試問題の正解はそれぞれで違うことも多い。これでは受験生のみならず英語教師も戸惑う。問題を作成した大学が正解を発表すべきだと訴え続け、自費出版で「これでいいのか大学入試英語」全5刊を発表した。何度も新聞に取り上げてもらうなど、県内外の関係者から話題を呼んだ本である。また定時制にも長く勤務し、その経験を基に、「定時制に光と夢を」も発刊している。 |
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