井上 荒野 

2013年3月26日(火) 「つやのよる」(井上荒野・著)を読む
 題名がひらがなで「つやのよる」と表記されるが、漢字かな混じりではたぶん、「艶の夜」、あるい「通夜の夜」か。男性遍歴が半端じゃない、魔性の女、艶(つや)が死にかけている。
 直木賞作家、井上荒野の作品であり、映画化もされている(R指定)。妻子を捨てて艶と駆け落ちしO島に住むようになったのが松生春二(映画では阿部寛が演じている)。映画では、「つやのよる〜ある愛に関わった女たちの物語〜」という題名になる。内容をよく言いえているサブタイトルが付加される。監督は「世界の中心で愛を叫ぶ」の行定勲だ。
 東京からほど近いO島で暮らす、島の有名人女性、「艶」。現在は病床に就いているものの、過去に運命を狂わされた男性たちが多数いる。その男性に関わる女性が各章の主人公となり、その女性を通して、あるいはその女性の夫や恋人たち通して艶の半生を語る物語である。普通は関わった男がそれぞれの章の主人公かと思うのだが、その男と関わった女性の視点で物語が綴られる。
 死にかけている艶のことを、夫・春二は艶と関係のあった男たちに知らせる。パソコンのアドレス帳や手紙から住所やアドレスを知る。慌てふためいたり、冷静だったり、O島に行こうと思ったりする男たちと、その相手の女性たち。真珠を入れている男もいるが、ある女性読者はどうやってあんな所に真珠を入れるの?と聞いてきた。そんなもん、知るかい。
 普通なら後味悪い魔性の女、性にだらしない女の物語。面白いと思うはずがないのだが、なぜかそれぞれの章が短編小説みたいで面白いのだ。ネット上の評判は映画の方がずっと面白いのだとか。DVD借りてきてみようか。R指定といってもそれほど過激なシーンはなく、ソフト調だという。
 なぜ私がこの小説を読もうという気になったか。分かる人は分かるだろう。我が妻は普通の女でよかった。  
 
 

Hama'sPageのトップへ My Favorite Mysteriesのトップへ