秦 建日子 

2007年5月18日(金) 「推理小説」(秦建日子・著)を読む 秦建日子はハタタケヒコと読む
 大胆不敵にも「推理小説」という題名の推理小説だ。犯人が書き綴る推理小説と同じように殺人事件が発生する。会社員、高校生、編集者。全くつながりのない3人の連続殺人だ。次の被害者は、22歳の女子大生。さらに次は6歳の女児だという。「これ以上被害者を出したくないならば、推理小説の続きを最低価格3000万円で落札しろ」との挑戦状がマスコミに届く。劇場型犯罪である。
 テレビドラマ「アンフェア」、そして今公開されている映画「アンフェア」の原作本である。テレビドラマは見なかったが、映画は、来週あたりまだ上映されていれば見ようかと思う。バツイチ、子持ち、大酒飲み、寝るときゃ全裸、無駄に美人の篠原涼子演じる雪平夏見をじっくりと見てこようじゃないか。
 「アンフェア」の原作本とは言うが、「アンフェア」(テレビでも映画でも)を見て面白かったから原作も読んだ、そういう人はたいていがっかりする(ようだ)。登場人物が足りない、エピソードが省略されている、展開がのろい、結局アンフェアなのは誰か分からなかった、など。
 だったら、原作を読んでから映画やDVD(テレビシリーズの)見たら、より楽しめるのだろうか。映画は考える必要がないから楽かも。犯人はもう知っているし、動機も分かったのだ。あるいは原作とは違う犯人を設定しているのだろうか。
 軽いノリの推理小説である。もともとテレビドラマ化、映画化が頭の中にあったのだろう。場面が目まぐるしく変わり、台本のような、ト書きのような記述があったりする。また、本格的なミステリーをおちょくる記述もあり、お遊びで書いたと思われる節もある。綾辻行人の「どんどん橋落ちた」、東野圭吾なら「名探偵の掟」などのように。
 作者、秦建日子氏はテレビ界では有名なシナリオライターだという。この作品で作家としてもデビューした。第2作目が、やや本格的になった、「アンフェアな月」。こちらを先に読んだが、断然2作目の方が面白い。
 
2007年2月11日(日) 「アンフェアな月 刑事雪平夏見」 
 原作は秦建日子(はたたけひこ)という作家、脚本家(「ドラゴン桜」など)。名前に子が付き、漢字だけを見ると女性のようでもあるが、男性である。今日一気読みした「 アンフェアな月 刑事雪平夏見 」は、TV人気ドラマ『 アンフェア 』の原作本の「推理小説」に続く、雪平夏見シリーズとも言うべき2冊目の単行本である。
 「俺が法律だ、文句あっか」、と拳銃ぶっ放すはみ出しデカ。男ならダーティーハリーやドーベルマンデカなど、そんなキャラクターは過去に何人もいた。しかし女性にそんな強いはみ出しデカがいたか。雪平夏見はそんな珍しい新しい刑事キャラである。
 捜査一課検挙率ナンバーワン、被疑者射殺数2は現職警官で最多の記録ホルダー、バツイチ、子持ち、大酒飲み、部屋はゴミ屋敷寸前、そして長身で超美人とくる。同僚に言わせると「無駄に美人」とか。なるほど。
 オヤジギャグも好きらしい。「おい、雪平なんとか言え」に、「なんとか、一度言ってみたかったの、このギャグ」。「将来、癌になる日が来たら言ってみたい、ガーンと」。かわいいところもある。
 生後3ヶ月の女児が誘拐された。犯人から身代金要求の電話がかかる。しかし何かが変だ。母親の状態、犯人の要求、そして山の中から発見されたもの。犯人が交渉役に雪平夏見を指名してきた。望むのころだ。やってやろうじゃないか。常軌を逸した電話での応対。誘拐事件のマニュアルなど、彼女にはクソクラエである。
 さすがにテレビドラマの演出家、脚本家の小説である。テレビドラマみたいに場面がコロコロ変わる。紙面の活字にも工夫が見られ、黒いページに白抜きのページがあったり、1ページに数文字だけとか。空白行あり、字体を変え、文字の配置を変え、まるで劇画風の小説、あるいは台本のような小説だ。読みやすい本で、面白く、一気に読める。
 前半に登場する人物、余命いくばくもない患者、それを宣告した医師、軽薄なテレビ番組プロデューサーなど、がそれぞれ繋がるラストは推理小説の常道である。雪平夏見の推理力もいっぱしの探偵並み。特にラスト、プロデューサーのデートに応じたあたり。常に読者の先を行く推理に我々は翻弄される。やられたな。
 テレビでヒットしDVDボックス販売、原作本が売れ、続編が発行され、さらに3月7日に映画も公開される。最近のよくあるコラボレーション。テレビでも映画でも雪平夏見を篠原涼子が演じる。来月公開の映画もやはり見たい。


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