福澤 徹三

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2004年10月7日(木) 「壊れるもの」(福澤徹三・著)を読む 読んで暗くなる小説 落ち込んだ!
 最近(と言っても7月30日)幻冬舎から発売されたばかりの福澤徹三の書き下ろし長編小説である。福澤徹三は初めて読む作家であるが、ホラーや怪奇小説で定評があり、最注目の気鋭作家だとか。新聞の書評を読み早速注文し取り寄せたものである。
 おとといから昨日にかけて一気に読んだ。やはり怖い。ごく一般的、ささやかな日常の幸せが、ある時から徐々に、徐々に壊れていく恐怖がテーマである。大手百貨店の課長、妻と娘の家族三人暮らし、四十歳を過ぎて手に入れた郊外の一軒家。特に大きな不満はない。どこにでもある普通の家庭。それがある時から転がるように壊れていく。ラストは凄惨を極める。が、夢か現実か。
 序盤はごく些細な不安が点描される。どこにでもある、誰だって多少は感じる不安である。妻・陽子の帰りが遅いのが気になる。高校1年生の娘・麻美の素行が心配だ。娘との会話はない。彼が課長を務める大成百貨店の経営は苦しくなったという。しかし今のところリストラはない。売り手市場の大学4年に、内定していた他の2つの会社を蹴って選択した会社である。役職にもついた。しがみついていればこの先も大丈夫だろう。
 最近、必ずしも自分の責任ではないが、仕事上でミスが重なった。気に入らない上司とうまくいかない。帰りに飲む酒の量も増えた。本人は意識していないが病気の進行もあるようだ。苦労して買った一軒家が建つこの丘の不気味な噂とは何だ。真夜中の異音、得体の知れない工事人たち。行動をおこす彼。大学時代の忌まわしい記憶がよみがえる。いよいよ崩壊の序章である。
 そして後半。一気に転がり落ちるこの怖さ。あのドリームハウスの秘密は途中で感づいたがもちろん辻褄は合わない。いやはや、読むのがつらくなる小説だ。それでも投げ出すわけにはいかない。結局最後まで読んだ。疲労感を覚える。頭痛がしてきた。確かに面白いことは面白いのだが、この読後感は何だ。たかが小説、されど小説。
 これを読んで興味を持った方へ。この小説をお貸しします。是非読んでみて感想をお聞かせ下さい。