遠藤 武文 

2013年1月14日(月) 「トリック・シアター」(遠藤武文・著)を読む 
 「江戸川乱歩賞受賞作を遥かに超える衝撃度!東京と奈良での同一犯による同時殺人。さらに閉鎖病棟内での密室殺人。『プリズン・トリック』でデビュー、驚異の新人トリックメイカーによる想定外ミステリー」
 帯にある宣伝文句にそそられた。市立図書館から借りて正解。1575円も出して買っていたらバカをみた。
 始まりはいい。3月21日、早稲田大学シネマ研究会のOB会で富樫が佐々岡を殺す。同日同時刻、奈良で富樫が泰代を殺す。そんなバカな。この本の題名は「トリック・シアター」。どんなトリックで、同一人物が同じ時間帯、500キロ離れた場所で2つの殺人を犯すことができるというのか。そのトリックの解明がこのミステリーの中心をなすと捉えていた。
 さらに、数年間にわたり、3月21日に早稲田大学シネマ研究会出身の5人の人物が殺されたり自殺したりする。この謎も本格ミステリーのようであり、かなり興味をそそられた。なのに、なのに。。
 本格物だと思って読み始めたのに、なに、この倦怠感。途中から本格ミステリーの流れはダルい警察小説になった。我孫子警視正が特異なキャラであるが、あのへんてこな機械はストーリーに全く絡まず、途中途中挿入される信長の寓話も意味不明だ。我孫子警視正が主人公であろうが、好きになれないキャラである。
 それに、2つの殺人犯であるべき富樫が岩手県花巻市の国立病院精神病棟に隔離されていた、アリバイ成立なんて、がっかりさせてくれるではないか。富樫のアリバイ成立したら2つの殺人事件のトリックもたかが知れてる。閉鎖病棟内での密室殺人の謎もしょぼい解決策だった。
 結局は、トリックなんてものではない。お座なり。途中から、闇の警察機構、集団テロ事件、決して口に出してはいけないマルエスハーイチヨンと話は飛び、結局なにが、トリック・シアターなものかと不満たらたら。読まなきゃよかった。
 いったい、発行社(講談社)、発行人はこの小説を読んでから発行を決めたのか。
  

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