ダン・ブラウン 

2006年5月18日(木) 「ダ・ヴィンチ・コード」(ダン・ブラウン・著)を読む
 ダ・ヴィンチ・コード展が開かれ、テレビでは各局でダ・ヴィンチ・コード特番を組む。本屋には単行本、文庫本の「ダ・ヴィンチ・コード」が横積みにされベストセラー、さらに「ダ・ヴィンチ・コードの謎」など関連本も売れに売れている。そして、いよいよ明後日(5月20日)、映画「ダ・ヴィンチ・コード」(監督:ロン・ハワード、出演:トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、ジャン・レノ)が、満を持して全世界、同時に公開される。
 今や「ダ・ヴィンチ・コード」は社会現象にまでなった。これでは読まないではいられない。映画も観るだろうから、読むなら映画を観る前がいい。単行本で上下2冊、文庫本で上中下3冊は、私が普通に読んで2、3日で読み終える長さではない。だがあまり日数をかけたくもない。映画公開の20日前には読んでおきたい。
 と言うことで、話題の「ダ・ヴィンチ・コード」をGW明けから読み始めて、やっと今日、無事に読了。謎解き、暗号解き、秘宝探し、逃走劇、追跡劇、思いがけない展開など、まことに映画的。そして、キリスト教や秘密結社、テンプル騎士団、シオン修道会などの薀蓄もたっぷり。スリル満載、スピーディーでとても面白い。なるほど世界中で読まれている理由がよく分かる。
 もちろんミステリーとしても一級品。終盤に導師の正体が分かった時には、思いもかけない人物に思わず声をあげそうになる。ダ・ヴィンチの名画に隠されている秘密も興味深い。私も実際にミラノで見た「最後の晩餐」、ルーブル美術館で見た「モナリザ」、「岩窟の聖母」など。特に「最後の晩餐」に描かれているキリストの秘密とは?ただ漫然と見てきた絵の中に、誰も教えてくれなかった秘密が歴然と存在する。これには唖然としてしまう。ロスリン礼拝堂は是非行って見たい衝動に駆られる。本能的に胎内回帰の願いか?
 最近、「博士の愛した数式」、「容疑者Xの献身」という、数学に係る主人公を扱った小説を2冊読んだが、この「ダ・ヴィンチ・コード」は真打登場と言ったところか。特に、フィボナッチ数列と黄金比は目からうろこだった。
 フィボナッチ数列とは、1・1・2・3・5・8・13・21・34・55・89・・・。直前の2つの数字の和の連続数だ。そして隣り合う2つの項の比は限りなく1.618に近づいていく。この1.618こそ黄金比の数字。1.618:1。これは芸術、自然科学、人体、建築などに大きな意味を持つ数字である。次から次へと黄金比の例を出すくだりは、さすがに世紀の数学者でもあるレオナルド・ダ・ヴィンチ。作者ダン・ブラウンの父親も数学者だという。
 宗教や西洋史に疎い私であるが、こんなことまで書いていいのかと思われる、常識を覆すようなことも書かれている。キリストは男女同権論者だった。キリストに愛人がいた。いや、キリストは結婚していた。子どももいた、つまり父親であった。妻はマグダラのマリア。彼女は娼婦だったという噂もある。こんなキリスト教を冒涜するような激しい内容に不買運動やボイコット運動でも起こりそう。
 この小説を「インディ・ジョーンズ」シリーズに似た聖杯伝説のミステリーと言う人もいるかも知れない。本書の中でも、ハリソン・ラングドン(インディ・ジョーンズを演じたのはハリソン・フォード)と揶揄するような会話もある。しかし映画はどうか分からないが、小説では簡単に比較するような内容ではない。「ダ・ヴィンチ・コード」は、学術的であり、すべて事実に基づいている作品なのだとか。いろいろな意味で勉強になる。読んで楽しく知らず知らずに勉強になるのであれば、こんないい事はない。

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