大道 珠貴


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2003年2月13日(木) 「しょっぱいドライブ」(第128回芥川賞 大道珠貴(ダイドウタマキ)・作
 1年前の第126回の受賞作は「猛スピードで母は」(長嶋有・作)だった。昨年も今の時期に「文藝春秋」を買って読み、その感想も少しだけMyDiaryに書いている。
 今年の受賞者は4度目の正直となった大道珠貴氏(36歳女性)で、作品名は「しょっぱいドライブ」。30代の女性と60代の老人の奇妙な絡みがおかしい。うん?なぜか雰囲気が昨年の「猛スピードで母は」に似ている。
 当然ストーリーは全く別物だが、似ている点その1、どちらも私小説であること。「猛スピード〜」は12歳の少年の目を通した母親が淡々と描かれ、「しょっぱい〜」は30代の女性が60代の男性との生活をユーモラスにしかも冷めた目で描く。
 似ている点その2、どちらも幸せに恵まれないがしたたかに生きていく女性が主人公であること。舞台はどちらも小さな町である。「猛スピード〜」では離婚歴があるが強くて憎めない女性、「しょっぱい〜」では愛情があるのかないのか分からないが60歳を過ぎた老人と結婚しようとする女性である。危なげであるが、なぜか応援したくなる女性たちだ。
 似ている点その3、題名からすぐ分かるように、自動車が共通に2人の関係を取り持つ役目を果たしている。「猛スピード〜」では、スパイクタイヤを履きフェンダーミラー付きの懐かしい車に乗る親子、「しょっぱい〜」では、会話は少ないがウグイス色の流線型の車でデートする親子ほどの年齢差の男女。どちらも単なる移動する手段としての車ではない。小説の中で重要なファクターとして車を登場させている。
 似ている点その4、どちらも選者の一人である石原慎太郎氏が酷評していること。「猛スピード〜」は、「こんな程度の作品を読んで誰がどう心を動かされるというのか」、そして「しょっぱい〜」では、「少なくとも私は何の感動も衝撃も、共感も感じなかった」と。天邪鬼か。彼は褒めることもあるのだろうか。