明野 照葉 

2013年2月4日(月) 「チャコズガーデン」(明野照葉・著)を読む 
 「禍福はあざなえる縄のごとし」。災いと幸福は表裏一体で、まるでより合わせた縄のようにかわるがわるやって来るものだ。不幸だと思ったことが幸福に転じたり、幸福だと思っていたことが不幸に転じたりする。成功も失敗も縄のように表裏をなして、めまぐるしく変化するものだということのたとえ。英語では、Sadness and gladness succeed each other.(悲しみと喜びは交互にやってくる) 。「冬来たりなば春遠からじ」、「好事魔多し」も意味的には近い。
 「禍福は〜」がこの本のテーマのようだ。「禍福の法則」などと表現を変えたりして何度か作中に出てくる。
 チャコズガーデンとは吉祥寺にある瀟洒な分譲マンションの名前だ。一見裕福な幸福そうな家族が住んでいるが、実はどの家族も孤独で悲しみを抱えて生活していた。不幸があれば幸福もある。幸福には裏返しに不幸が訪れるものだ。それが、「禍福の法則」。よくあるパターンである。
 ある家族が引っ越してきてからチャコズガーデンに起こる不気味なこと。それは深夜の異音、行方不明となった大金持ち、増えるダイレクトメール、不審者の影など。
 一方、最上階の7階には高齢の女性が住んでいたが、誰も姿を見た人はいない。この謎の女性は誰なのだ。徐々に明かされる女性の正体、さらには行方不明の大金持ちの夫婦、夜中に響く出所不明の物音も解明される。
 最初は、チャコズガーデンはホーンティドマンション(幽霊屋敷)か、これはホラーなのかと思って読み進めるが、中ほどから、「な〜んだ、幽霊の正体見たり、枯れ尾花」となる。孤独な不幸な登場人物が幸福になる。主人公らしき渚も別れた元夫とよりを戻しそうになるし、全体的に登場人物が安易に幸福になる。ゆるい小説である。こんなハッピーエンドを望んでいなかった。
 いずれ、「禍福の法則」を教えてもらったことで、この本を読んだ甲斐があったと思うことにしよう。 
  

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