愛川 晶 

 
2014年4月5日(土) 「11月に死んだ悪魔」(愛川晶・著)を読む   
 最近読んだミステリーの中では断然、最も面白い。「イヤミス」だと言う人もいる。読んだ後いやな気持になるミステリーが「イヤミス」。「告白」など湊かなえの作品の多くが「イヤミス」と呼ばれたりする。
 しかしこの小説、読んだ後に爽快感は全くないが、「イヤミス」というほどでもない。長い作品であるが飽きないし、間(日数)を開けても気にならず、よくもまあと思えるほど、次々に予測できない展開が面白い。
 ダッチワイフは聞いたことがあるが、江戸時代の吾妻形とか南極1号というのは初めて知った。越冬隊員が実際に使ったのかどうか。都市伝説みたいなものだと思っていた。南極1号があり南極2号もあった。今ではラブドールというのだそうだ。表紙の写真もそのラブドール。かなり精巧に作られ買えば50万〜60万もするそうだ。
 序盤にそのラブドールがストーリーの中で重要なアイテムになる。しかし、ラブドールが関わってくるのはその辺りまでで、中盤からの殺人事件にラブドールは全く関わらず、拍子抜けする。ラブドールはただのストーリー上の遊びだったのか。だったら、表紙に使わないでくれよ。あんまり人前で読んでいたくない表紙である。
 回想、記憶、作中小説、夢、現実がごちゃごちゃになる。誰からとも分からないメールも随所に挿入される。いわゆる入れ子状態も。解離性障害の登場人物もおり、また二重人格者のような人物もいる。イマジナリー・コンパニオンって初めて知った。さらに同性愛の対象者だった男性の娘と関係を持つ主人公。男も女も下半身は別人格って本当なのか。どこまでが空想でどこからが現実か。
 かなりぐちゃぐちゃしたストーリー展開であるが、作者の力量なのか、読者は作品に没頭できる。そしてわけの分からない挿入パーツがラストで見事に収まっていく(たぶん)。きちんと検証することはしなかったが、たぶんつじつまは合っているのだろう。
 このミステリー、やはり「イヤミス」だったかも知れないな。登場人物の誰にも感情移入できないから。 
 
2004年4月24日(土) 「白銀荘の殺人鬼」(愛川晶+二階堂黎人・著)を読む 
 またまた「吹雪の山荘」もの。またかと思うが、この手のミステリー、好きだから、本屋で見つけるとすぐ買ってしまう。設定はほとんど同じ、吹雪で道路が壊滅状態(この作品ではトンネル崩壊も)、電話線も不通となり、まったくの陸の孤島状態となる山荘。そこで起こる連続殺人事件。この作品ではなんと12人も死ぬ(殺される?)。残酷な描写はサイコ・スリラーっぽい。
 しかし、この小説は他の本格ものとちょっと違う。多重人格者・立脇順一の中の一人(人格)・美奈子が語る一人称小説になっている。
 立脇順一の中には美奈子のライバル晴代も潜んでいる。同じ人間なのに、本人の順一になったり、美奈子が出てきたり、はたまた、晴代になったりするわけだ。こんな推理小説はまったく初めてだ。同じ「吹雪の山荘」でも、手を変え品を変え、変化をもたせなければ読者が買ってくれない、ってわけ。作者の苦労も分からないでもないが。。
 本格推理小説jの主人公に、多重人格者を登場させることは、作者にとっては読者をだましやすい、安易な策ではなかろうか。2人の有名推理作者共同の執筆である。練りに練ったトリックなのだと思う。伏線も、ラストの意外性も、男か女か分からない名前の登場人物(ネタばれ)も、ミステリーファンを満足させる一応のレベルに達していると思う。が、正直、エピローグを読んでもよく分からない部分が多かった。
 ラストで知るキーパーソンの謎を知った上でもう一度読めば理解しやすいだろうが、もう一度よむ暇があったら別の本を読みたい。でも彼(彼女?)の登場する場面を探して少しだけ読んででみた。なるほど、なるほど。。おっと、ずるいよ。それは! 

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