1 「キャスト・アウェイ」 監督:ロバート・ゼメキス 出演:トム・ハンクス ヘレン・ハント
 期待感が大きかった「アンブレイカブル」と「ペイ・ファワード」は私にとっては納得できない映画だった。2作品続けてがっかりし続け、満を持して公開を待った「キャスト・アウェイ」を、初日に陸前高田の公友館で観てきた。公友館は古い映画館で、画面はそれほど大きくない。エアコンがうなり声をあげ、スピーカーは性能が悪いらしく音がこもりボリュームも十分ではない。そんな悪条件にもかかわらず、「キャスト・アウェイ」は最高におもしろかった!これほどのすっきりと楽しめた映画は久しぶりだった。
 無人島に漂流したトム・ハンクスの現代版ロビンソン・クルーソーと伝えられている映画であるが、それだけではない。じっくりと見せる恋人ヘレン・ハントとの愛には泣かされる。無人島で孤独に耐えながら、バレーボールのウィルソン君との友情(?)も見逃せない。無人島を脱出しヘレンと再会を果たしたあたりは、大学時代に英語劇で演じた「イーノック・アンド・アーデン」を思い出した。
 映画の大半を占めるトム・ハンクスの無人島でのサバイバルシーン。音楽が全く挿入されず、せりふもほとんどない。波や風の自然の音響が臨場感をあおる。中年太りぎみだったのトム・ハンクスの体が、孤島での生活を過ごすうちにスリムになっていくのに彼の役者魂を見た感じである。なんと撮影を1年間中断しその間24キロのダイエットに成功したのだそうだ。まさか体型にCGは使っていないだろうから本当にびっくりする。
 そしてついに筏で島を脱出する。このとき初めて音楽が流れる。さらに漂流生活を得て大型貨物船に救出されるが、おおかたのサバイバル映画はこのあたりでクレジットが流れるだろう。しかしこの映画にはさらに帰国後のドラマが待っているのである。

2 「ザ・メキシカン」 監督:ゴア・ヴァービンスキー 出演:ブラッド・ピッド ジュリア・ロバーツ そして超大物スターが出ているゾ
 ラブ・コメディの女王ジュリア・ロバーツの役柄はあれで納得。「エリン・ブロコビッチ」のあの胸がなくなった?いや、ご心配なく、後半はばっちり。エリンほどではなかったが、ノーブ○のサービスまでも。。ブラッド・ピットは今までとはまったく違った役柄だった。ドジでお人よしのダメ男。そして組織のパシリ役というコミカルなジェリー役を新しいテイストで演じていた。あんなブラビも大好きと多くの女性ファンが映画館に殺到したためか、そしてGWということもあり、北上のワーナーマイカルは座席は6割〜7割りぐらいは埋っていた。指定席であったが、1番後ろの列を希望したところ、隣が空いていなくても良いですか、と言われたくらいだ。普段なら両隣に観客がいることはまずない。
 好きなジャンル、ロード・ムービーである。ブラビはメキシコへ、ジュリアはラス・ベガスへ向かう。音楽がいい。昔のマカロニ・ウェスタンそのままの音楽とメキシカン音楽は実にエキゾチックでゾクゾクする。伝説の拳銃メキシカンを巡る争奪戦とその拳銃に呪われたように次々と起こるトラブルや事件は映画的にエキサイティングである。二人を見ているだけでもうきうきし幸せな気分に浸れるが、はらはらどきどきシーンも満載である。そしてパンフレットにも載っていない、組織のボス役のあの大物スター。えっ!と不意打ちを喰らった感じだ。儲かった気分である。
 なんとなく「キャスト・アウェイ」に似たシーン。その1、広大なメキシコの中のあの交差点。「キャスト・アウェイ」のラスト・シーンに負けじとあの交差点が何度か出てきた。その2、あのブス犬と口にくわえているアメフトかバスケの半分空気の抜けたボール。まさかウィルソン製のボールではないかと目を凝らしてみたが、分からなかった。あのブス犬との友情は、ウィルソン君との友情を思い出してしまった。
 じゃんけんは日本だけのものと思っていたが、メキシコにもあった。ブラビがレンタカーを借りるシーンで、何かを決めるためにじゃんけんをしていた。グーを出していた人が勝ったようだ。 

3 「プルーフ・オブ・ライフ」 監督・製作:テイラー・ハックフォード 出演:メグ・ライアン ラッセル・クロウ デイビッド・モース
 メグ・ライアンとデニス・クエイドとの離婚が、メグ・ライアンとラッセル・クロウとの関係にどれほど原因があるのかわからないが、とにかく今最もホットな噂の2人が主演するサスペンス映画である。第73回アカデミー賞で作品賞受賞した「グラディエーター」に主演し主演男優賞を受賞したラッセル・クロウであるが、「プルーフ・オブ・ライフ」でも男臭い派手なアクションをたっぷりと見せてくれる。役柄は中南米で多発する誘拐の交渉人(ネゴシエーター)であり、メグ・ライアンは夫を誘拐された依頼人である。
 パンフレットや宣伝では、二人の現実世界でのロマンスを意識させた、依頼人の人妻(メグ)と恋におちいる交渉人(ラッセル)などとあおるが、そんなシーンあったっけ?と思うほど「かなわぬ恋」の要素は小さい。人質救出に向かうクロウとそれを見送るライアンのキスシーンは無理に作ってしまったと思われる不自然さがある。ケビン・コスナーの「ボディー・ガード」と比較する解説者もいたようであるが、どこが似ているというのか。
 この映画は、日本でも時々報道される身代金目当ての誘拐がテーマであり、誘拐保険や誘拐犯との交渉というビジネスがあることなど初めて知る。かなり現実味を帯びた映画である。何年か前にフィリピンで起こった若王子さんの誘拐そして身代金による解決を思い出したりした。人質にされるディビッド・モースという俳優であるが、どこかで見た事がある役者だと思っていたが、パンフレットを見て、彼が「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でセルマの金を盗むあの警察官の役者であることを知った。

4 「ダンサー・イン・ザ・ダーク」 (デンマーク映画) 監督:ラース・フォン・トリアー 出演:ビョーク カトリーヌ・ドヌーブ デビッド・モース
 時間的な都合だけで、あまり予備知識を持たないまま、たまたま入ったのが北上ワーナー・マイカルのこの映画である。タイトルなどは出ないままで数分間、画面は真っ暗、音楽だけが流れる状態が続く。何だこれは?と思いながらも、タイトルの「イン・ザ・ダーク」を意図的に観客に知らしめているものだろう、と考えながら真っ暗な画面を見ていた。やがて、主演のビョークが演ずる薄幸の女性の生活が描かれる映画が始まる。
 チェコスロバキアからミュージカルのステージを夢見てアメリカに移民し、貧困の極みのような生活をしながらも劇団活動にも加わりながら、息子の目の手術の費用を蓄える。セルマもやはり失明寸前であり、映画の前半にはすでにほとんど見えなくなる。手持ちカメラでの撮影のためであろうが、画面があちこちに揺れ動き、少し乗り物酔い状態になりながらも映画にはどんどん引きずり込まれる。
 この映画がミュージカルだと思わずに見ていたが、やがて映画が始まって20分近くたってからだろうか、ミュージカルシーン5つのうちの最初の場面が始まる。まさかこんな所で、という場所である。何と彼女が朝から晩まで真っ黒になりながら働くステンレス工場で、工場の機械音や作業員の息づかいのリズムが次第に音楽になり、セルマが歌い、踊り、他の作業員も一斉に踊り出す。唐突過ぎて最初はびっくりしたが、後にミュージカルシーンは、彼女の夢想シーンであることがわかる。内容が暗すぎる、むごい、胸が切り裂かれるシーンの映画であるが、このミュージカル・シーンには救われる思いだ。いつまでも続いて欲しいと見ていて願った。終ると辛すぎる現実があるからである。
 ストーリー的には本当に切ない映画である。ハッピー・エンドではなくても、少しはセルマに生きる希望をもたせる映画だろうと何度もそう願いながら観ていた。だが、その期待はことごとく裏切られた。こうなって欲しくない、と思う最悪の方に映画はどんどん進んでいく。そして最後は。。やはりここでは書けない。哀しすぎる、むごすぎる、ショックである。
 主演のビョークが天才的なミュージッシャンであることも、失礼ながら映画を見終わってパンフレットを見て初めて知った。なるほど歌唱力抜群のその歌は聴く者に何かを訴える力強さを持っている。ぶ厚いめがねをかけた、きれいとか可愛いには縁遠いセルマのいでたちであるが、めがねを取った顔はすてきである。心の底から思い切り高音を出すところの表情が素晴らしい。後でCDを是非買おうと思う。終ってからも1番心に残っている歌は、鉄橋と貨物列車で歌い踊られる「アイブ・スィーン・イット・オール」である。

5 「ハンニバル」 監督:リドリー・スコット 出演:アンソニー・ホプキンス ジュリアン・ムーア レイ・リオッタ ゲーリー・オールドマン
 監督のリドリー・スコットは「グラディエーター」、「エイリアン」、「GIジェーン」など、この監督の作品ならおもしろい、と安心して見られる映画を作る人だ。
 「ハンニバル」は10年前の「羊たちの沈黙」の続編として作られた、猟奇連続殺人事件の犯人、ハンニバル・レクター(人喰いレクター)とFBI特別捜査官クラリスの再びの対決を描く恐い映画である。ぞくぞくするオープニングからおぞましいラスト近くの晩餐シーン、そして原作とは違うというラストまで一気に見せる。気持ちの悪い、ショッキングなシーンが続くが、ただのホラー映画ではない。そこはエリート監督リドリー・スコットだけに味付けが心憎い。イタリア・フィレンツェの美しい街並みや豪華なオペラシーン、レクターの超一流の衣食住、クラシックのBGMなど、見る(聴く)べきシーンはたくさんある。
 最初から登場する特殊メークの車椅子の老人。正視できないほど醜い顔で片目だけで演技する役者は誰なんだろう。パンフレットを見て初めて分かったが、ゲーリー・オールドマンだということだ。しかしキャストの欄に名前が載っていない。エンド・ロールにもなかったようだが、なぜなんだろうか。
 注目のラストは、レクターが自分の手首を切ったってことか。クラリスへの究極の愛情表現かと思ってしまうラストであるが、賛否両論はあるだろうな。問題の、最後の晩餐はゲロゲロシーンであるが、なぜか笑いたくなってしまう。監督のお遊びが過ぎた感じであるが、皆さんはどう思いましたでしょうか。
 この映画でリドリー・スコットは日本人を何度も登場させる。雑踏の中、有名観光地、飛行機の中など。日本語が飛び交うシーンもある。そう言えば、高倉健主演、大阪が主な舞台だった「ブラック・レイン」の監督もリドリー・スコットである。

6 「クリムゾン・リバー」 監督:マチュー・カソヴィッツ 原作:ジャン・クリストフ・グランジェ 出演:ジャン・レノ ヴァンサン・カッセル ナディア・ファレ
 ジャン・レノはフランス人だったんだ。「レオン」や「RONIN」での流暢な英語を聞いていると彼がフランス人であることを忘れてしまう。「クリムゾン・リバー」はれっきとしたフランス映画である。2年ぐらい前に見た「ジャンヌ・ダルク」や「仮面の男」(ディカプリオ主演の四銃士もの)では登場人物が全員英語をしゃべっていて奇異な感じを受けたが、この「クリムゾン・リバー」では監督を始めほとんどの登場人物はフランス人であり当然キャストはフランス語で話す。
 最近観たフランス映画というと、「TAXI」ぐらいしか思い当たらない。昔はアラン・ドロンやジャン・ポール・ベルモント、カトリーヌ・ドヌーブなどが出演したフランス映画が結構あったものだ。アメリカ映画(ハリウッド映画)とは一線を画し、派手さはないがどこかヨーロピアン・テイストを漂わせエスプリやウィット感じさせる映画がフランス映画だと思っていた。
 しかし、「クリムゾン・リバー」はそんなイメージを打ち破る、それどころか堂々とアメリカ映画とわたりあえる、いかにもハリウッドを意識したような超エンターテインメントムービーである。最近観た「バーティカル・リミット」の山岳アクション、「セブン」や「羊たちの沈黙」の猟奇連続殺人事件のミステリー、そしてカーチェイスや銃撃戦のダイ・ハード的アクションなど、1時間46分の中にさまざまな面白さをてんこ盛りで、息をもつかせぬおもしろさである。宣伝コピーの決して「結末は人に言わないで下さい」的お願いも「シックス・センス」で成功したこの手の映画の常套句である。
 映画的には確かにおもしろい。恐くて一瞬も目が離せない作品に仕上がっている。しかし、もったいぶった割には結末がそれほど意外な驚愕ではなく、またその結末でイントロからの様々な殺人や事件が説明できるのかは疑問だ。つじつまが本当に会うのか観た人に聞いてみたい。ネタばれになるのであんまり詳しくは書けないが、最初からフルパワーで引っ張って引っ張って、ラストの種明かしに腰砕け(雪崩はすごかったが)だったような感じである。でも観て損はしない映画でありお薦めの1本である。

7 「ホワット・ライズ・ビニース」 監督:ロバート・ゼメキス 出演:ハリソン・フォード ミシェル・ファイファー
 21世紀最初の映画は、ヒッチ・コックを大いに意識したロバート・ゼメキス監督による「ホワット・ライズ・ビニース」である。アクション映画のヒーローというイメージのハリソン・フォードであるが、この映画ではまったく別のキャラクター、とてもとても恐い殺人鬼・ノーマンを演じている。ドアップの目があんなに恐かった映画は初めてである。その目がハリソン・フォードの目だなんて信じられないだろう。何度も椅子から飛び上がるほどの恐さは強烈なデジタルサウンドのせいもある。前の席の観客の反応にはつい笑ってしまった。
 前半は「ポルターガイスト」風であり、サスペンスを徐々に高めていく作風はまさにヒッチコック・タッチ。そして何やら妖しげな隣のカップルを伏線と思わせながら、後半は思いもよらぬ恐ろしいホラー映画と化す。ジェイスンよろしくダイハード(なかなか死なない)なキラー・ハリソンが美しい妻、ファイファー演じるクレアを追いかけ・追い詰める。死んだと思ってもこれで終わりとは思われないホラー映画の常道を期待通りに楽しませてもらった。
 しかし、思わせぶりなあの隣に住む夫婦の喧嘩や血の付いたサンダル、夜中に車で大きな荷物を運ぶ等が映画のストーリーとは全く関係がなかったなんて、何たるミス・ディレクション。フェアじゃない。また前半のポルターガイスト風&お化け屋敷風の異常現象の説明もなかったような。
 最後のお墓のシーンでまた名作「キャリー(ブライアン・デ・パルマ監督」のあの名場面の再現なるか、と思いっきり期待したが、そこはうまくはずされた。その後は何もなくクレジットが流れて、ホッとため息をつく。
 題名は原題通りであるが、何か一工夫がなかったものか。英語が分かる人ならすぐ意味が分かる(底に潜んでいる物)がそうじゃない人はこの題名からイメージがつかめないだろう。昔風の漢字二文字で「裏切」「疑惑」「背信」「怨念」など、いくらでも付けられたと思うが。

8 「ペイ・フォワード 可能の王国」 監督:ミミ・レダー 出演:ケビン・スペイシー ヘレン・ハント ハーレイ・ジョエル・オスメント ジョン・ボン・ジョヴィ
 いわゆる癒し系のヒューマン・ドラマ(だと思う)であるのにあのラストはないだろう。いくらラストに凝る映画が最近のトレンドだとしても、この映画にあのラストではせっかくのさわやかな気持ちが一転重苦しくなってしまう。監督の意図は何だったんだろうと考えてしまった。監督は「ピース・メーカー」「ディープ・インパクト」そしてTVシリーズの「ER」の女性監督、ミミ・レダーである。
 天才少年、ハーレイ・ジョエル・オスメントくんの繊細な表情が何ともかわいい。彼目当てに来たと思われる若い女性が多かったようだ。歯の矯正器具も取れており、「シックス・センス」の時よりほんの少し成長していたようだ。
 社会科の授業で、ケビン・スペイシー演じる教師から、社会を変える方法について考えよとの課題が出される。なんとも味のある教師および学習課題である。日本ならたぶん「総合的な学習の時間」での内容であろう。その答えとしてハーレイくんの考え出した方法が「ペイ・フォワー運動」である。困っている周りの人3人を手助けする。手助けされた人はさらに別の3人に恩返しとして何か手助けをする。つまりネズミ講やチェーンレターの良い方向への裏返しバージョンと言ったらよいか。
 人間はだれでも悲しみを持っているという前提の下に登場人物が描かれる。顔にやけどの跡のあるケビン・スペイシー、アル中からなかなか抜け出せないシングル・マザーのヘレン・ハント、彼女と別れたジョン・ボン・ジョヴィ、二人のホームレス(一人は女性、ヘレンの母親)など、だれもが心に傷を持つ、しかし、魅力的な人物ばかりだ。そんな彼らがペイ・フォワード運動により、少しずつ目覚めていく展開はさすがキメの細かい女性監督だけになかなか見せてくれる。少し強引すぎるところもないではないが、ハーレイくんのかわいらしさに免じて許してやろうと思ってしまう。

9 「アンブレイカブル」 監督:M.ナイト.シャマラン 出演:ブルース・ウィルス サミュエル・L・ジャクソン ロビン・ライト・ペン
 「シックス・センス」に続き、M.ナイト.シャマラン監督が観客に挑戦する謎解きミステリー。キーワードはアンバランス、対比、逆転現象?アンブレイカブルがブルース・ウィルスでブレイカブルがサミュエル・L・ジャクソン。この二人は徹底的に対称の位置関係にある。白人と黒人、はげとふさふさは外見からすぐわかる対称関係。その他にもシャマラン監督が散りばめる秘密がたくさんあったようだ。実は見終わってからもよくわからなかった映画である。もう一度観なければ理解できない。最後もあれっ?という感じ。評判になっているほどおもしろいとは思わなかったが、鑑賞能力によるものか、体調不良で眠かったためか。もう一度観て、この映画の本当の怖さとおもしろさを感じることができるなら感じてみたい。
 脚本も担当するシャマランであるが、脚本料はなんと500万ドルとか。アメリカのトップ層の脚本家の脚本料が75万ドル以上、新進の脚本料は25万ドル以下、平均するとその間というが、シャマランに支払われた500万ドルは破格の金額である。まだ30歳のシャマラン監督、家系に現在12人の医者がいる超エリート一家に生まれた天才監督である。シックス・センスでも映画に登場していたが、今回も彼の登場シーンがある。これはヒッチ・コックへのこだわりか。
 入場口で「解説マニュアル」なる印刷物を渡されるが、「アンブレイカブル」をご覧になる前は決して,封を開けないで下さい」と注意書きがある。お約束通り、見終わってから開けて見たが、監督が仕掛けたという10の逆のシーンの紹介がある。はっきり言ってすっと見逃してしまっていた特にどうということのないシーンの羅列である。「この映画をよく理解するために是非映画を観る前にこのパンフレットをお読み下さい。」と書いてもらった方が良いと思うのだが、素直ではないだろうか。

10 「シックス・デイ」 監督:ロジャー・スポティスウッド 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー トニー・ゴールドウィン ロバート・デュバル
SFアクションが良く似合うシュワちゃん。「ターミネーター」、「ターミネーター2」、「プレデター」、「トータル・リコール」、「トゥルー・ライズ」等、アクションも冴え渡り、どれも評判になった映画である。個人的に最も面白かったのは(当然日本で大ヒットにもなった)「ターミネーター2」と「トゥルー・ライズ」である。しかしその後の「ツインズ」、「ジングル・オール・ザ・ウェイ」のコメディものや昨年のアクション大作「エンド・オブ・デイズ」などは失敗作だったのだろうか、あまりパッとしなかったようである。そして満を持して出演した今年のお正月映画はクローン人間を扱った「シックス・デイ」である。監督は、前作「007トゥモロウ・ネバー・ダイ」で、アクション・ヒーローもので実績を挙げたロジャー・スポティス・ウッドである。期待感は高まる。
 実際に遺伝子組み替え食品は普通に市場に出回り、クローンによる臓器作成がすでに実行化されつつある現在、さらにはクローン羊や牛がすでに各国や日本でも作成されている現在、この映画は単なるSF映画以上の意味を持ってくる。理論的にはクローン技術により人間のコピーを作ることができるわけであるが、それを禁止しているのが「6d法」である。日本でもクローン人間禁止法なる法が検討されているとか。
 そんなことを考えながら映画を観ていた。シュワちゃん演ずるアダムがもう一人いるわけだが、どっちが本物でどっちがクローンなのか、だんだん見分けがつかなくなってくる。そもそもクローン人間は自分がクローンだと認識しているものなのか。お互いに相手を見て「お前がクローン人間だ」と言ったら、映画を見ている我々はもう混乱してしまう。お互いが殴りあいしたり、敵に追いかけられたりしても、果たしてどちらに感情移入してよいものか。
 お金をかけたアクションシーンや未来の衣・食・住はよく考えられており楽しめる映画であるが、いつものシュワちゃんの大活躍にカタルシスを感じるまでではなかったような気がする。やはり孤軍奮闘のシュワちゃんの映画が見たいと思う。