【親戚の話】



 この人は祖父の妹の孫です。祖母だったかな? ちゃんと確認したことがないもので曖昧ですけども。まあ、イナカだからここらへんまで含めて「親戚」になっちゃうのです。
 この人は電気屋さんです。製品売ってる人じゃなくて配線工のほうです。家を建てるとか、新しく電気を引くとか、そういうところに呼ばれるんですね。家も近いので、うちとは仲良くしてくださってます。世代は青木と一緒(第3世)なんですが、歳は親父様のほうが近いです。だから父と酒を飲みに来たりもします。この話題も、お盆か何かでうちに油を売りに来たときの、酒の肴でした。


 新しく建てている家の配線のことで大工さんに呼ばれました。午後からの約束で行ってみると、どうも大工さんたちの様子がヘンなんですね。なんだかお酒臭くて、3時を過ぎたあたりから慌ただしく片づけを始め、とにかく、暗くなる前には寝泊まりしている2階に引っ込んでしまおうとするのです。どういう理由だか知りませんが、家財道具というか、家の財産の類がいくらか現場に置きっぱなしだったらしいですね。大工さんたちはそれらの番も兼ねて泊まっていたんだとか。
 そのなかに仏壇があったのです。ロープでぐるぐる巻きにした、絶対開かないようにしてある仏壇。階段の脇に置いてあります。バチあたりだなー、と思ったそうです。
 もうひとつ不思議だったのはパイプ。2階から1階に向かって設置してるんですけど、用途不明。
 そのうち現場監督もそわそわしてきて、じゃあまた明日、ってことになりました。
 翌日。結局仕事が終わりきらなくて、大工さんたちと一緒に泊まることになったんだそうです。大工さんたちはやっぱり日暮れ前に仕事を切り上げてしまう。それで、食べ物や飲み物、大量のお酒なんかを明るいうちに2階に運ぶんです。これだったら夜に下に降りるのはトイレぐらいだなあとぼんやり口にしたところ。
 真っ青な顔で「とんでもない、絶対降りない」と言われたそうで。
 トイレの用は例のパイプを使って足すんだと教わってびっくり。
 なんでそんなマネをするんだと訊いても、みんな口に出すのもイヤって感じで答えてくれません。今晩泊まればわかると言うのですが。
 で、まあ、夜になったんです。みんな食事もそこそこに、お酒ばっかり飲んでる。そりゃあ酒臭くもなるわなー、と思ってたら階下でガタガタ音がする。かなり激しい音で、泥棒ならもうちょっと静かにやってほしいぞ、ってな調子だったそうですが。
 泥棒じゃないのか、いいのかと訊いても、違うと言って誰も立たない。で、やっぱりお酒を飲んでる。
 気になるので見に行ったんです。
 仏壇がひとりで勝手に揺れてるんですよ。倒れるんじゃないかって勢いで。地鳴りじゃないですけど、そんな感じの奇妙な音も中から聞こえてきたりして。
 慌てて逃げ帰ったら、みんな訳知り顔で振り返ったんです。音はずっと続いています。結局、正体なくなって眠りこけるまで飲み続けたとか。
 幸い次の日に仕事は終わったんですけどね。
 彼も迷信深い人だから、仏壇をあんなふうに縛っているからじゃないかと訊いてみたそうです。そしたら、あんなふうにしたのは大工さんたちだったんですね。以前は揺れるだけじゃなくて、戸もバタバタ暴れたんだそうで。なにか出て来るんじゃないかと怖くて仕方なかったらしいです。
 ちなみに、仏壇は一晩で50pぐらい移動したとか。


 子供の頃に1回だけ聞いた話なので細部があやふやですけれど、だいたいこんなような話でした。



トップへ つぶやき部屋へ