【うちのはなし】



 唐突ですが、我が家にはなんかいるらしいです。
 でも悪い意味じゃないですよ。
 まあいたと言えば、古い家のときからいたんだと思いますけどね。
 青木が大学の時に改築しましたが、前の家は本当に古かった。築60年ぐらい? 傾いてるは隙間開いてるは歪んでるは、とにかく古かったんです。でもいい家でしたよ。囲炉裏があったおかげで柱がすっかり黒光りしてて。
 床下で野良猫が寝起きしてたり宿題してるとハツカネズミと目が合ったり、挙げ句の果てには屋根の中に鳥が巣を作ってたり。家の中で虫の鳴き声するし、ま、野生の王国みたいな家でした。
 青木は中学の後半から高校まで(真冬の凍死しそうな時期を除いて)ずっと座敷をねぐらにしてました。だから夜も当然座敷で寝てるわけですよ。
 夜中にふと目が覚めると、欄間が気になってしかたないんですね。座敷と奥座敷を仕切る襖の上にあった透かし彫りの欄間。当時奥座敷は物置になっていて、ほとんどひとが入らなかったんです。だから余計に怖かった。電気暗かったし。視線と言うほどはっきりはしていない。でもなんか気配が。
 実はネズミだったりするんですがね。


 家を建て替えてすぐ、神仏の類を新しい家に移す作業をします。ウチはお坊さん呼んだんだったかな? お経あげていただいたんですよ。
 屋鳴りってあるじゃないですか。柱なんかがぴしぴし鳴るっていう。あれが玄関から始まったんですね。玄関から廊下に来て、仏間に入り、お経をあげているあいだ部屋の中を回って、そのうち収まりました。本当に来るんだねえなんて、一同でご飯を食べながら言ったものです。
 これは父の証言ですが、二階でふすまが倒れるような大きな音もしたそうです。他の人は聞いてないですが、とにかく聞こえたと父は主張します。
 でもウチはまだ可愛いほうで・・・・確か一族の誰かの家だったと思うんですけど、お経をあげているあいだ中、二階で床をどかどか踏みならされたんだそうで。あれはすごかったな、なんて、父たちが話してました。やっぱりそこも「なんかいる家」なんでしょう。


 家が新しくなってから遊びに来た友達が奇妙な証言をしてくれました。
「シ、って(静かに、のポーズ)声がしたから振り向いたら床の間だった」
「台所あたりで呼ばれたから返事をしたら、青木さんが二階から降りてきた」
「走り回る軽い足音がしたから、小さい子が来てると思った(当然子供は来てない)」
 どうも、うちにいる「なんか」はもてなし好きらしいです。家人だけのときは出てきません。
 いや、そう頻繁に出られても困るけど。



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