『遠野物語』(とおのものがたり)
    『遠野物語』は、明治43年(1910年)6月に柳田国男により自費出版された。
  定価50銭で350部刊行されたが、そのうちの大半が友人知人に寄贈された。
  そもそも『遠野物語』に収めている話は、遠野市土淵町出身の佐々木喜善が子供
  の頃から聞かされたり土地に伝わる話を柳田国男に語り聞かせた物を柳田が文語
  体に改め自費出版したものである。
佐々木喜善(ささききぜん)
    佐々木喜善は、明治19年岩手県上閉伊郡土淵村に生まれた。
  盛岡の岩手医学校を中退した後、文学を志し東京の哲学館から早稲田大学師範
  部聴講生となった。筆名を鏡石といい感銘を受けた泉鏡花から一字を取ったと言
  われる。東京にいる間に、柳田国男と親交のあった水野葉舟らと親しかったのが
  縁で柳田に土地の話をする機会を得る。まもなく遠野に戻り土淵村の青年会長や
  村長なども務めたが作家を志し、民俗学的研究から『聴耳草紙』『奥州のザシキワ
  ラシの話』などの著書を発表した。晩年は、仙台に移り昭和8年に48歳で永眠した。
『遠野物語拾遺』(とおのものがたりしゅうい)
     『遠野物語拾遺』は、昭和10年に再版された『遠野物語』の増補という形で刊
  行された。『遠野物語』の続編を出版しようとした柳田国男が佐々木喜善から資料
  を集めたが原稿の量が膨大であったため、物語の選択に時間をとられ出版が遅
  れたといわれる。その間に佐々木喜善が他界したため、一冊の本ではなく『遠野物   語』の第二部という形になった。